私のインスタやブログ、メルマガ等で〇〇mm級断熱という

言葉がよく出てきますのでその〇〇mm級断熱が

どの程度の値なのかという事と、根拠を示したいと思います。

 

このブログは以前書きかけだったものを完成させたもの。

 

外壁の実質熱貫流率計算にはQPEXを利用していますが、これを書いた当時のバージョンなので、ちょっと古く、現バージョンと若干数字が違います。

 

最近の方がより熱橋を多く見込まれるようになり、

若干数字が悪くなります。

 

 

高性能GW16Kを柱・間柱間に105mm充填

【U=0.409】

 

U=0.4前後をGW換算100mm級断熱と私は呼んでます。

 

 

 

 

 

高性能GW16Kを

柱・間柱間に105mm充填

付加断熱を高性能GW16K、

躯体外側に105mmで合計210mm

【U=0.202】

 

U=0.2前後をGW換算200mm級断熱と私は呼んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

高性能GW16Kを柱・間柱間に105mm充填

付加断熱を高性能GW16K、躯体外側に2層で

合計300mm

【U=0.144】

U=0.15前後をGW換算300mm級断熱と私は呼んでます。

 

 

 

 

充填なしでスタイロエース等の

押出ポリスチレンフォーム3種50mmの

外張り断熱のみ

【U=0.499】

 

GW100mm級断熱より2割くらい性能が劣る感じ。

 

北東北や北海道では外張り断熱のみで

施工している会社はほとんどなくなって

しまったのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

FP工法、スーパーウォールの他、

ジョイ・コスなど類似のパネル断熱工法。

※付加断熱なしの場合

【U=0.359】

 

硬質ウレタンλ0.024、厚み105とした場合。

硬質ウレタンでも熱伝導率がもっと低いものが

出ているようですので、その場合はもう少し良くなります。

ウレタンの厚みが100とか60の場合はもう少し悪くなります。

木枠部分の熱橋を計算していますが、パネル外周に木部が

ない場合はもう少し良くなります。

 

GW100mm断熱より2割くらい性能が良くなる感じ。

 

「〇〇パネルはグラスウールの約2倍の性能!」

などと謳われる事があります。

高性能GW16Kの熱伝導率が0.038で

硬質ウレタンが0.024(メーカーによって差がある)

フェノールフォームが0.020

で素材自体の熱伝導率は1.5〜2倍近いですが

 

まず、厚みが比較対象より薄いと、

厚みあたりの性能が倍でも性能は倍じゃないという事がひとつ。

 

また、

充填部分は柱や間柱などの木部熱橋の割合が多いので、

断熱材の性能を倍にしても、壁全体の断熱性能が倍には

ならないという事に気をつける必要があります。

 

そのせいで、高性能GW16K105mmの壁と比べて

2割くらいしか性能が高くなってないんですね。

 

それでも、地域によって、会社によって、あるいは時代によっては

そういった工法を採用するメリットは十分にあると思います。

 

 

 

 

 

 

最上級品のGW105mmを柱間柱間に充填。

各メーカー色々ありますが、ここでは

高性能GW28K(λ0.033)を105mm

充填した場合の数字です。

 

【U=0.377】

 

GW100mm断熱より1割くらい性能が良くなる感じ。

柱の太さが120mmなら、120mm品でもっと良い数字になります。

誰でも扱える汎用的な断熱材でも、簡単にこの数字は出ます。

省エネ地域区分・6地域の場合はサッシ次第でHEAT20の

G2グレードにも余裕で届きます。


 

 

 

 

 

 

新住協的には、省エネ地域区分6地域であれば、

高性能GW16Kをしっかり105mm入れたら

普通の方法で快適性も省エネ性も出てくるよね。

という考え方だと思います。

付加断熱するなら付加断熱材も原則グラスウール。

安いし、劣化しないし、防火的な安全性も高いだろう

というのが新住協の基本の考え方です。

 

私は6地域でもみんな付加断熱した方が良いと思うのですが、

新住協的に付加断熱もGW、というよりも

樹脂ボード系断熱材の方が施工上、設計上の収まりや

防湿の上で難易度が低く、地域によっては

かえってコスト安になるだろうとは思っています。

 

ウチの場合も2021年現在、充填が高性能GW28K、

付加断熱はネオマフォームです。

 

2021年度の菊池組は

戸建の半数が350mm級断熱になる見込み、

残り半数が250mm級断熱、

賃貸住宅は200mm級断熱。

 

 

250mm級でも日射取得が多く取れる場合、

350mm級と年間暖房付加が逆転する事も

ありますので、温熱は外皮性能だけじゃない

という事はもちろん認識してほしい。

 

充填部分も、GWの防湿気密施工がしっかりできるような

大工さんが少ない地域では、例えば現場発泡ウレタンも悪くは

ないと思います。(もちろんできれば何かしらの手段で付加断熱もしたいです)

「現場発泡ウレタンは廃棄に困るから環境に悪い、燃える」と言って

問答無用で叩くのは、

「グラスウールはずり下がる、内部結露のリスクが」

といったネガキャンと変わらないんじゃないかと個人的に思います。

無駄に不安にさせてはいけない。

 

敵はあくまで「低気密・低断熱な住宅」により住まい手が不幸になる事。

不安なのは、優良な住宅が生まれ社会の資産となる事が阻まれてしまう未来。

 

他の手段をつかって高断熱・高気密を目指しているのを叩くのは

20年ほど前の「充填断熱 VS 外張断熱」と同じになってしまいます。

 

20年前に「充填断熱の方が良い」って言ってた人の多くは

現在では外付加断熱をプラスするようになり、

 

20年前に「外張断熱の方が良い」って言ってた人の多くは

現在では充填断熱をプラスするようになっているのでは

ないでしょうか。

 

とても良い方法があっても「高くてなかなか採用出来ない」

では困りますし、結局のところは

価格を含め、できる限り住まい手が長い目で見て

幸せになる方法を各自探して実践すればいいじゃない。

 

それに尽きます。

 

 

 

 

 

この話は気が向けば、また続きを書きたいですね。