小学校の音楽の時間。


 雪や こんこん あられや こんこん ・・・・


機嫌良く歌っていると教師から
「こんこんじゃないでしょう。こんこですよ」
と必ず注意を受けた。
その時は仕方なく「こんこ」と歌うが、内心では「こんこん」の方が好きだった。

学校の行き帰りなどに雪が降っていると、口をついて出る歌はやはり嬉しさ勝って


 雪や こんこん あられや こんこん
 降っても 降っても まだ降り止まぬ

 ・・・・



このところ雪の日が多い。

今朝も「こんこん」と降り続く雪を見て、そんなどうでもよさそうなことを思い出していた。

夏、入道雲が高い日。
家の前に川があるせいで小さい頃から釣りが好きだった。
近所にあった堆肥小屋にミミズがたくさんいて、釣りエサに不自由することはなかった。
無心にミミズをさがしている時、幻聴が始まる。
ヒソヒソと数人のささやくような声。
何を話ているのかはわからない。
ただヒソヒソヒソヒソと終始まとわりつく。

秋、涼しげな風の吹く晴れた日。
草むらで無心に虫を追っている時、幻聴が始まる。
ハヤク!ハヤク!ハヤク!ハヤク!
ささやき声がつきまとう。
ハヤク!ハヤク!ハヤク!

うるさくも怖くもなかった。
無心の行為をおえると同時に幻聴はかき消えた。

今は手のひらをまるめて耳にあて潮騒のような音を楽しむだけ。
あの晴れた日に聞こえた幻聴がなつかしい。

アイスキャンディー売りのおじさんがいた。

自転車の荷台に木箱をのせて鐘を鳴らしてやって来た。

アイスと書いた旗をヒラヒラなびかせながらやって来た。


川で水遊びしていた子供達がいっせいに

「おんちゃん待ってて~!」

小銭をとりに海パンいっちょで家に走る。


アズキとミルク。

割り箸の刺さったアイスキャンディーはその2種類。

私はどっちも好きで、どちらにしようかといつも迷うのだった。



夏休みの午後、入道雲が高々とそびえるような日の記憶。