
初日に観たくてカレンダーに入れていて、仕事で無理だったら諦めたけど夕方、あれ、今日行けそうと思い、定時にタクシーを予約。会社から映画館まで5分、間に合いました!!
「異端の鳥」、原題はThe Painted Bird。
自分たちと違うモノを排除しようとする人間の奥底にある感情が露わになる。戦時中ならなおのこと。
モノクロ3時間。
....あっという間だった。
めちゃくちゃ凄かった。
あーーーーーーー。
以下、ネタバレ注意です。
ホロコーストを逃れて親戚のおうちで暮らす少年。10歳くらい?黒髪に黒目、まつ毛が長くてとっても綺麗な顔立ち。
学校でもいじめられ、親戚の家でも歓迎されていないことを察しながら、お家に帰れる日を待ちわびて小さく生きている。
ある日、キッチンで座っているおばちゃまの背中を確認した夜、まだ同じ格好でいることに気づいて近づくと座ったまま亡くなっていた。
びっくりして持っていたランプを落とし、そのままお家が火に包まれる...
ここから少年の孤独で壮絶な日々が始まるのです。
怪しい奴だと街でボコボコにされていると、村の魔術師らしき女性に買われ助手として病人の家を訪ねる生活。蛇とか呪文使ってそれらしきことをやっているうちに少年も高熱に冒される。魔術師によって土に埋められ顔だけ出して変な儀式が始まる。それでもぐったりしたままなのでもはや用無しと埋められそうになるところを逃げ出す少年。
やっと逃げ込んだ家でスープをもらい、今度こそ安心できるかと思ったのも束の間。ご主人による奥様へのDVが凄まじく、夜な夜なその様子を見て休まらない。DVは少年にも及び、ここも逃げ出す。
似たような境遇の人たちが集まる中で、それでもいじめられ川に落とされる少年。流木に捕まりそのまま流され、その緩やかな流れに身をまかせ、攻撃を受けない久しぶりの穏やかな時間。
暑い夏が終わり凍える冬。吹雪の中を逃げ込んだおうち。若い女性にご飯を出してもらい酪農を手伝う。今度こそ安らげるのかと思ったら、女性による性的暴行。”飼っているヤギより自分は役に立たない”と知ると、そのヤギを吊るして頭を落として女性にぶつけて逃げ出す。
...この辺からかな、ちょっと少年がオトナになってきた。全く感情を出さずニコリともしない。自分が拷問を受け吊るされていたから、ヤギを痛めつけるのに「吊るす」しか手段が思い浮かばなかったんだろうなと思う。それでも「吊るす」という能動的な行動が見られた。今まではなすがまま受動でしかなかったから。でも、自分が吊るされたから吊るしたのであって、もし愛されていたのなら愛すこともできたはず、と思うと本当にセツナイ...子ども相手はなおさら...
その後、神父さんに助けられ教会で暮らすことに。神父さんは病弱なこともあってミサに訪れていた男性に「少年を預からせてほしい」と言われ、信じて渡してしまう。その夜、この男性から性的暴行....。神父さんが様子を見にきて何かを伝えようと試みるけど、逆に拷問されてしまう。でも、ちょっとずつ成長しているから森で見つけたネズミがいっぱいいる穴に彼を落とすことに成功。いいんだよ、いいんだよ。
でも今度は、森を歩いていた老人を襲って、追い剥ぎ。.....生きていくため....
本当にニコリともしないんだけど、初めてニコリとしたのは、村で拷問で吊るされた人たちを見た時。初めて口角が上がってニヤリとした。
次は、線路に寝転んでその上を長い列車が通って行った時。もはや刺激を求めているとしか思えない....恐ろしくココロが痛い...
ソ連兵に助けられる。野営地で地元の人と仲良くなりすぎた兵隊さんたちが逆に襲われひどい仕打ちを受ける。「目には目を 歯には歯を」と少年に覚えておくよう伝え、復讐をする兵隊さん。彼からピストルを譲り受け、孤児が通う学校へ送られる。
校庭では、子どもたちのよくあるいざこざが繰り広げられるが、少年はもはや子どもレベルの感情は持ち合わせていない。夜、抜け出しては怒られる。街でふと見かけた船の模型。ふと手に取ったら「ユダヤ人の盗人」と罵られ殴られる。たぶん、その船が、最初の親戚のおうちの近くて「早く迎えにきて」と書いた紙で船を作って川に流していたんだよね、その船に思えたんだけど....。少年はソ連兵に教わった通り、目には目を歯に歯をで、もらったピストルでその商店主を撃つ。孤児院で問題になるが、逆にお父さんが呼び出され再会!
嬉しくて涙を流して抱っこして喜ぶお父さんに対して、少年は無反応。目は「お父さんだ」と理解しているけどどうしたらいいのかわからない。明日はお母さんのところに帰れると言う夜、お父さんが作った粗末なスープを飲まずに床に叩きつける。ちょっと安心した。これって怒りに見える甘えだよね?今まで一切甘えられる場なんてなかったから。
おうちへ帰るバスの中。居眠りするお父さんを見ると腕にユダヤ人の刻印。たぶん「お父さんも大変だったんだ」と理解した少年は、曇った窓に自分の名前を書く。今まで誰に尋ねられても答えることができなくて本当に忘れていたっぽかったけど、お父さんの刻印を見て境遇を察し、初めて明かされる少年の名前。
で、3時間終了。
いろんな人に拾われひどい扱い方をされ、自分にされたことをすること以外、主体的な行動ができなかった少年。生きるだけで精一杯。ここで生きていたことがすごいし、テロリストやマフィア的な世界で使い捨てにされるんじゃなくて、最後の最後の最後でやっとお父さんと再会してほっとできるシーンが1シーンだけだけどあって、やっと救われました。
「この映画いつ救われるんだろう」と考えていました。
暴行を受けた男性をネズミの穴に放り込んだ時、ちょっとだけ救われた。
ヤギの頭を窓から投げつけた時もちょっとだけ救われた。
でも、通りすがりの老人を襲った時は、逆戻り。違うよ、そっちじゃない。
商店主を撃った時も、違う、救いはそうじゃない。目には目を歯には歯をは、そうじゃない。手段を教えてあげてと思った。
救いは本当ラストの数秒。それまでの3時間は酷すぎる戦時中の現実。
チェコ&ウクライナ共同制作映画。
原題のThe Painted Birdも象徴的に描かれている部分があって、ほんとにあっという間のモノクロ3時間でした。
今、生きていられることに感謝して大切に今を生きようと思いました。愛されて育ったらきっとみんな幸せな世の中になる❤️
そしてキコにできることあったら、ちょっとだけでも何かしたいと思ったのでした。
追伸。
星の世界的には産業革命に始まる地の時代は今年12/20まで。200年以上ぶりに風の時代が始まる。人種差別なんてもちろん持つもの持たざる者の区別はなくなり皆平等にチャンスが来る。大切なのはモノやお金、地位ではなく知性、経験、コミュニケーション、あなたらしさ、そして新しいメディア。ネット環境はもう必須。楽しみね💫
新作ダニエル・クレイグは来春までお預け。はー、これもスケジュールに入れたまま延期延期ですぅ。
帰りは、ダニエル・クレイグを思い出しながら歩いて帰りました❤️