希記の迷々思考実験室 -8ページ目

希記の迷々思考実験室

自分の問いへの答えを求めて想像を広げよう。

 神は研究者に尋ねた。「人は一億年後に消滅する。お前ならどうするか」と。

 

 研究者は神に言った。「今と変わらずに生きていくだけだ。人が自ら死を選ぶことは愚かな行為だからだ。また、一億年先の未来を想像できないからだ。その通りだろう」と。

 

 神は研究者に行った。「確かに人が自ら死を選ぶことは愚かな行為だ」と。

 

 研究者は神に尋ねた。「人はどのように消滅するのだろうか」と。

 

 神は研究者に言った。「それを教えるつもりはない。ただし、人は人がどのように滅びるかを予測しているはずだが。自分たちで調べた予測を信じていればよい」と。

 

 研究者は神に尋ねた。「消滅する原因を教えてくれないなら、どうして消滅するときを私に教えたのか。わざわざ私に教える必要はなかったのではないか」と。

 

 神は研究者に言った。「あなたを試してみたくなったからだ。ためになったかな」と。

 

 研究者は神に言った。「たとえ、消滅する未来を知っても、私たちは今まで通り、新たな知識や技術を求めて活動するだろう。いま人の世界を生きるためには新たな知識と技術が必要だからだ。人は人の世界が続く限り生きることを諦めないだろう。もちろん、あなたが教えてくれた消滅する未来を黙って傍観することもないだろう」と。

 

 神は研究者に言った。「期待通りの答えが聞けて満足した。最善を尽くせ」と。

 

 研究者は神との対話を終えた後、一億年後の未来を想像してみたが、人の生活を想像できなかった。私たちは予測できる少し先の未来のために対策を立てるしかできないのか。

 

注意:作り話より。

 

◆解説

 

 人の滅びるときがわかっても人は生きることをやめられない。

 

 人は誰かから消滅を宣告されても自ら死を選ぶ決定をしないで生きるだろう。人は傷つけば痛い。空腹ならば苦しい。人は死を回避しようと試みる。人にとって死とは恐ろしい現象だ。また、人は家族や好きな人がいるなら自ら死を選ばないだろう。誰かから人の消滅を宣告されても変わらない。しかも人が消滅するとしてもはるか先の未来で起こる出来事だ。たとえ消滅の日が近づいても変わらないかもしれない。今を生きるしかない。

 

 すると、人は世界で生活するために新たな知識や技術を求めるしかない。人が生きている間は人の世界を人の手によって維持していくしかない。そのために人は新しい商品を開発して経済を維持する必要がある。そのために自然への理解を深めて、新たな技術を開発するしかない。それらの行為が生きていくために必要だ。つまり、人が生きることを諦めない限り、知識や技術を必要として手放せないだろう。これまで通りの生活が必要だ。

 

 しかも、人は滅びを迎える世界を予期しながらも今を生きるしかない。滅びを迎える未来を知ったとしても、人の知識や技術で対処できないなら諦めるしかない。しかし、人は現状では想像できないような知識と技術を開発するかもしれない。それならば、常に未来を見つめながら、今を生きるしかない。滅びを迎える未来の訪れを覚悟しながら、今を生きればよい。そのとき、人は後世に生まれた人が消滅を回避すると期待してしまう。

 

したがって、消滅を宣告されても、人は今と変わらずに人生を楽しんでいけばよい。人の死ならば、誰かが知識や技術を受け継いでくれる可能性がある。その可能性の消滅によって受け継ぐ人がいない事実に恐怖する。それでも、少し先の未来を予測して対策を立てながら、今の生活を維持して発展させるだけで精一杯だろう。いまこの世界でできることをすればよい。つまり、限りある時間の中でいかに人が人生を楽しめるかを考えればよい。

 

人の消滅を宣告されても、今と変わらない生活を過ごせるだろうか。

希記より。