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希記の迷々思考実験室

自分の問いへの答えを求めて想像を広げよう。

 2100年頃に日本の研究者が老化しない薬を発明した。そしてすべての日本人が使用できるぐらいの量の薬を作れることがわかった。ただし、その老化しない薬を使っても若返ることはないみたいだ。その研究者はすべての人に使って欲しいと思って研究を始めた。

 

しかし、最終段階で日本の首相が老化しない薬の使用を制限した。その制限とは、年齢が20代から40代の日本国民にその薬を使用すると定めた法律だった。法律ができた理由は老化が進んだ大人に薬を投与しても働き手にならないからだ。介護が必要な老人が老死しなければ介護し続けなければならない。その負担が生じる状況を避ける必要があった。

 

 その国家が定めた制限法に国民は怒り狂った。ある60代の男は言った。「子どもの頃から老化しない薬を待ち続けていた。まだ仕事もできるし、健康上問題ない」と。多くの国民が署名運動に走った。人の自由を著しく束縛する法律だと非難した。

 

 首相は国民に公言した。「老化しない人として生きるこれからの世代に迷惑をかけてはいけない。年老いた人は老化しない生を諦めて自然に死ぬことを選ぶべきだ。私は首相であっても62歳なので自然な死を選びます。皆さんも笑顔で老化しない生を諦めよう」と。

 

 この法律ならば老化しない薬を飲めるのは2051年以降に生まれた人々だ。2020年頃に生きている国民のほとんどは死んでいるだろう。生きている間に老化しない薬が開発されても、使用を禁止されたらその薬の使用を諦められるか。それとも負担を背負ってでもすべての人による老化しない薬の使用を許容できるか。ただし、ここでは若返る薬はない。

注意:作り話より。 

 

◆解説

 

 もし老化しない薬が開発されたら、その薬を使用できる人を制限するべきだ。

 

 ある集団は老化しない薬が開発されたら使用できる人間を年齢制限するべきだと唱えた。老化が進行して若い人と同じように働けない人を永遠に養ってはいけない。もし若い人で集団を作れば介護が必要な人も病気になる人も不慮の事故を起こす人も減少するはずだ。国民全体が労働者となって国家を労働で支える。国民から得た税金で国民の生活を保障すればよい。そのために老化しない薬を飲めなかった50歳以上の人は老死するべきだ。

 

 別の集団は老化しない薬を使用できる人間を制限するべきではないと唱えた。老人がいない世界は不自然だ。博物館によって老人の存在を説明しなければいけなくなる。また、これからも長生きしたいと望む人たちの自由を束縛してはいけない。周囲の人が工夫すれば、まだ働ける人は多く存在する。国家がこれまで国を支えてくれた国民の生活を保障すれば何の問題もない。老化しない薬を利用できる機会をすべての国民に与えるべきだ。

 

 他の集団は実際に若い人だけで集団を形成したほうが便利だけれど不自然さを感じて解答できない。高年齢の人が多い状態ですべての人が老化しない薬を飲んだ場合、高年齢の人を支える若者は大変だ。さらに子どもの出産を制限すれば、より大変になるだろう。肉体的に若々しい人だけの集団のほうが活動しやすく、生活も便利だろう。ただし、外見が50歳以上に見える人がいない世界は不自然だし、生きてほしい人を切り捨てられない。

 

 したがって、政府が老化しない薬を使用できる人を強引にでも制限するべきだ。この物語に登場する首相のように、50歳以上の人がこれから生きる若者のために老死を選べばよい。労働力や生活の質が向上するならば制限するべきだ。ただし、介護が必要だから駄目ならば障害を負った人はどうなる。誰もが事故や病気で障害を持つ可能性がある。仕事の能力がない人はどうなる。様々な問題とともに老化しない薬の制限を決断するだろう。

 

 この首相のように老化しない薬を制限する宣告ができるだろうか。

希記より。