今、私はここに悪役になることを宣言する。拳を強く握りながら心の中で叫んだ。そう声には出していない。だって声に出したら、決意が揺らぎそうじゃん。知っていますか。なんやかんや周りから言われたらなんだかやりたくなくなる、あの現象。自分から悪役という立場を取ろうとしてるのに、わざわざ「なんで?」とか言われっちゃったら説明しないといけなくなる無駄な時間。良いじゃん、結構強い意志でやりたいと思ったんだもん。かっこいいじゃん、悪役。悪役がかっこいいからヒーローが輝くんだよ?知ってる?アンパンマンもバイキンマンがいないとただの優しい男の子なんだよ。そう、バイキンマンは物語上の太陽。ヒーローに意味を持たせるための悪役。ある意味、ヒーローを主人公として守っているのは悪役なのではないか。悪役を深堀することで物語に深みが増す。優しいだけじゃ話は進まない。正論と暴論がある方がおもろくない?

 だから、私は悪役に志願する。タバコをくゆらせ肩で風を切り、ちょっと派手なスーツとか着ちゃう。特徴的なサングラスとかかけてニヒルな笑顔で全力で殴り飛ばす。

「は?なんやこれ」

 いつもは超プリティキュートの優しいお姉さんが、ボソッと呟くからかっこいいのかもしれない。着ている服はただの白ワイシャツ黒ズボンと緑エプロンでもかっこよく見えちゃうかもしれない。雑に結ばれた髪も、目に合わないコンタクトのせいで目をすぼめているその視線もかっこいい要素になりうる。そうトドのつまりはかっこいい要素には「少しの不機嫌」が必要なのかもしれない。

 

 私の友達は良いやつだ。良いやつなのに、良いやつ止まり。残念な友達。いつか主人公になるだろうとか思っていたけど、知らないうちにただのモブになっていた。ちょっと待ってよ。私は貴方の親友枠を狙っていたのに。都合の良い友人枠。最終回で謎の力に目覚めて貴方を救う予定だったのに。それなのに、貴方がモブになってしまったら私はさらにモブになってしまう。

「………」

 困る。仕方ない。せっかくなら。せっかく生きるなら、貴方が主人公になっていてほしい。かわいそうな中二病だって言われてもいい。もう私は中二という歳ではないし。何なら大人だけど。かわいそうな貴方はバイト先のババアの口先に負けている。苦笑いを浮かべる貴方に昔はあった主人公の風貌みたいなのは、今は全くない。かわいそうな貴方。泣くなら私の前だけにさせたい。皆に愛される主人公。私だけの親友。だから、私はここに宣言を残す。私は、