ごろん。あー、無理だなぁ。りんごが落ちた。


 Twitterも何もかも嫌になってきた。静かにアカウントを消してまた作り直す。いつもの病気。真っ暗な部屋でケータイを触る。

 LINEも友達を非表示にしたりしちゃう。見たくない、みんながキラキラしてる姿なんて。静かにアカウントを消して人との繋がりを見えなくする。消しはしない、寂しくなるから。熟したりんごが落ちるときみたいな、ごろんと突然消したくなる。あー、もういいや。頭をかきむしる。しんどい。時が進めば変わるというけど、私は何が変わるのだろう。

 大学5回生。2回留年してなんかもうどうでも良くなっている。毎日しんどい。親にもなんだか愛想を尽かされたのか、今月から仕送りが止まった。友達がどんどん卒業していく。私だけが木にぶらさがったまま、どんどん熟していっていた。それが遂に腐って落ちた。私は通帳をぼうっと眺めている。まずい、詰んでいる。机の上にはトイレットペーパーやコップ、アイスのゴミだったり…。玄関に沢山のゴミ袋が山積みになっている。床に酒の缶や瓶、キッチンには洗い物が溢れていた。

 足りない単位と足りないお金。もう大学を辞めて、なんか別のことをしたほうがいいかもしれない。アルバイトか、何か。単位も取れてないのにアルバイトで時間もなくすんかとか、母に言われたのを思い出す。それこそ、大学辞めて、アルバイトすればいい。今なら逆に出来るかもしれない。ケータイを取り出す。まだ、ケータイは使える。

『簡単・初心者・高単価』

 高単価だけ私には難しいけど、アルバイトってこんなにあるんだなと思った。私ってもしかして世間知らずだったのかもしれない。

 りんごは落ちた。腐ってしまった。明日にでも退学届もらいに行こう。もう無理だろう。明日になってもおんなじだと思う。おんなじだったら、明日も絶望するだろう。腐ってしまったりんご。でもその中にタネはあったみたい。働いてみたら、働いてみたら何か変わるかも。どうせ、親からの仕送りは止まった。働かないと死んじゃう。

 

 腐ったりんごのタネから芽は出るだろうか。