「嗚呼、花になりたい! 燦々と降り注ぐ太陽の光で光合成をしたい! 私だけの為に流れる風で泳ぎたい! 出来ることなら、たった一人の微笑みの為に生きて死にたい!」

 私は手に封筒を持ちながら叫んだ。なんで人間はこんな紙切れ一枚の為にあくせく勉強をしなければならないのだろう。嗚呼、嫌だ! 今すぐ土に還りたい。どうせ何も出来ないなら、せめて土の栄養となり、可憐な一輪の花の養分になりたい!

 昔は、まさかこんな大人になるとは思いもしなかった。小学生の頃の将来の夢は「木の上のケーキ屋さん」だった。中学生の頃の夢は「保育所の先生」。高校生の時の夢は「図書館の魔法使い」で、現在大学生の私の夢は「花」。何をしているのだろう。もう私は大人と呼ばれる歳ではないか! いや、まだ大人ではない。成人の儀式はまだ済ませてないからな! 何故か頭が痛くなる。これはまさかストレスというやつか! 禿げるのは嫌だ、勘弁願いたい。私は社会のバーコードにはなりたくない! 会社に着いたら頭のバーコードを読み取って歯車になりたいなんて気が狂ってるに違いない。

 ……もし、透視能力がある人に出会ったらどうしよう。

 脳みそに皺がないことがばれてしまう。コロンコロンってね。だがしかし、私には特別な力が眠っているから心配してないけどな! ほら、あれだよ。指をぱっちんするだけでみんな私の虜、みたいな? 現実? 何それ、おいしいの?

 ははは、虚しい、悲しい、恥ずかしい。素敵な三拍子ですねって誉められたい。誰か、私が恥ずかしさに悶える程に誉めなさい。これは、命令なのです! わっかりました。

「私、本当ベリーキュート!」

……どうかしたんですか、先輩?」

「み、見たなぁ!」

 土になりたい。又は、ミミズになって豊かな大地を造りたい。神様、どうかお願いです。突然部室に現れた彼の記憶を改ざんして下さい。出来ないのなら、せめて時間を戻して下さい。そうだ、壊れたテレビを直す要領で愛溢れるチョップを与えればいいのか!

「み、見てないです!」

「おや、天使?」

 天使様、大天使様が降臨された。なんて優しいのだろう。

「今日から君のこと、天使様って呼ぶね!」

「え、ホント大丈夫ですか?」

 戸惑う天使を見つめながら、私は心に決めた。

 私、大きくなったら「天使様」になるね!