「私最近、大でもなく小でもなく中が出るんだよね」

 大学の食堂にて。私はメンチカツ定食、友達はカレーライスを食べていた。彼女はカレーをスプーンでぐちゃぐちゃに混ぜながら続ける。

「最近さ、お腹の調子が悪いんよね。健康的なのが出ないの。それこそバナナみたいなの。どうしたらいいかな」

 スプーンでカレーをすくう。まさに、こんな茶色い液体のようなと言いながらカレーを口の中に入れる。さらに続ける。

「いや、カレーみたいなのならまだ健康的だよね。私の中から出るのはカレーを食べ終わった後の鍋に水を入れてこそいだ、フヨフヨしているやつみたいな。そんな感じなんだよね」

 淡々と語る彼女の隣で箸を唇に挟みながら自分の食べかけのカツを私は見つめていた。まだ彼女は続ける。

「白湯飲んでた頃はバルーンアートみたいな、バナナみたいなのだったんだけどね、形状が。ほら、形状が重要だったりするじゃない?でも今はカスみたいな、いや、カスが浮いた水みたいなのしか出ないのよ。痔にはならない筈なのになんだか調子が悪いように感じたり、痛くないのに。ほら!犬が大のトイレした後お尻を地面に擦り付ける気持ちがわかるような感じ!」

 嬉しそうなスッキリしたような顔を輝かせながらこちらに向ける。私は既に箸をトレーに置いていた。さっきまで箸を持っていた手にはケータイが収まっている。まだまだ彼女は話し続ける。

「本当にそれ以外は元気なんだよね。なんなんだろ、病院行った方がいいのかな。お腹の調子って体の健康じゃん。大切だよね。気になるな。こういう場合は内科?」

 人も多い大学の学食。私たちの周りだけ確実に空いている。まだまだまだ喋りそうな彼女に私は思わず口を挟んだ。

「それ、食べてからにしたら?」

 それとはカレーライス。ぐちゃぐちゃのカレーライスは彼女が話すことに夢中で全く減ってない。あっ確かに。と彼女。スプーンにカレーライスをすくい、口元に運ぶ。

「あ。」

 私がどうしたの?と聞くと気まずそうに小さな声で、

「ごめん、私カレーの話しながらうんこ食べてた?」

 と言った。丁度、次の授業の始まるチャイムがなる。こんなにテンプレートな話はない。そう思った。