ザブザブと足を濡らしながら歩いていた。
 少し振り返ると底に穴が開き、もう動かない船がある。舟先にあるランプが煌々と水面を照らしていた。
 手のひらにはマッチ箱。この箱には掠れた文字、小さな日記が書いてあった。でも、それは秘密。私とランプとの約束である。見せてくれたランプ。あの人と同じ、優しさを感じる。漂流した船、そして、道を照らし続けたランプ。嵐の前日、きっと素敵な特別な日であった事は間違いない。
足の間を小魚が踊る。きっと明日は良い日だ。