マッチ箱に手を伸ばす。幸いまだ濡れてはいなかった。中には数本マッチが入っている。これはいいものを貰った。ザブザブと水をかき分けながら上に戻る。チューリップの花びらが水の上で揺らいでいた。


 ふあぁと大きなあくびをしながら、舟の先まで歩いてきた。もう寝る時間だ。なかなかの収穫だった。マッチ箱に、舟の周りのこの布。結び目をほどき、カラフルな布を一枚一枚手に入れていく。赤、青、黄色。最後には腕いっぱいになっていた。

 あ、そうだ、と。ふと、ランプに目がいった。灯りが消えたランプ。手にはマッチ箱があった。腕に抱えた布を置き、シュッとマッチを箱にこすった。小さな光。それを消えないようにゆっくりとランプに灯す。薄暗いクジラのお腹の中。このランプの周りだけ明るくなった。

「来てくれてありがとう、お疲れ様」

 ボソリと呟いた。手のひらにあるマッチ箱が照らされて、かすれた文字がかすかに見えた。