トテカン、トテカン。
薄暗く静かなこの場所で、トンカチが木を叩く音が微かに聞こえる。池のように水が溜まる空間の真ん中、まるで島のような瓦礫の山にその男はいた。薄汚れたシャツ、ダボっとしたズボン。腕まくりをして、トンカチを木に打ち当て解体したり組み立てたりしているようだった。
「ふぅ……、さてさてどうしたものか」
ポケットから取り出したハンカチで額を拭い、天を仰いでいる。正しくは天ではないのだが。
ここは腹の中。男はクジラの腹の中だった。もう何日もここにいる。助けを待っていたのだった。
しかし、それも諦めつつあった。仕方ない。クジラは動くのだから。助けも来ないだろうと、止まってしまった時計を眺めながら息を吐いた。

「ふぅ……、さてさてどうしたものか」
もう一度呟いた。クジラの腹の中で、その言葉は反響することなく消えた。