随分前の話になりますが、お爺さんが居なくなって何年経ったんでしょう。いつのまにか店主が私になってしまいました。

伝え聞く話によると、息子さんとはぐれたお爺さんはこのクジラの腹の中に飲み込まれ、出れなくなりました。
出れないなら仕方ない。お爺さんは一緒に飲み込まれた船や木片を使い、宿を作りました。
お爺さんと同じように飲み込まれた客人をもてなす為に。お金は要りません。役に立ちませんから。必要なのは貴方の物語。聞かせてください。息子に出会えた時の土産話にいたします。どうぞ、おすわりになってください。まだまだ時間は沢山あるのだから。