ウトウ 善知鳥

英名:Rhinoceros Auklet

学名:Cerorthinca monocerata

チドリ目ウミスズメ科ウトウ属

生息地: 日本から米国カリフォルニア州の北太平洋沿岸に広く分布。日本では北海道の天売島、大黒島、渡島小島、岩手県の椿島、宮城県の足島などで繁殖している。

全長:38cm

鳴き声:(低い声で)ウー

雌雄:雌雄同色

 

陸奥の国、外ヶ浜(現在の青森市あたり)には、この地に流されて没した善知鳥中納言安方の化身であるウトウという鳥がいたという。ウトウは砂浜に巣を作って雛を隠すが、餌を獲って帰って来た親鳥が空から「ウトウ」と呼びかけると、雛が「ヤスカタ」と答える。

 

ウトウの群れ

 

この習性を利用して「ウトウ」と呼びかけ、「ヤスカタ」と鳴く雛鳥を捕らえる猟師がいた。雛を失うと親鳥は悲しみのあまり血の涙を流して飛び回るので、猟師は蓑と笠をつけて狩りをしたという。

 

不思議なことに顔の突起と飾り毛は、冬にはなくなるらしい

 

これを歌にしたのが西行法師である。

子を思ふ 涙の雨の 笠の上に かかるもわびし 安方の鳥 

さらにウトウのこの伝承から、猟師がウトウなどの鳥獣を捕獲し殺し続けた罪により、地獄で化け鳥となった善知鳥から責められ苦難を与えられるという能の演目「善知鳥」が作られている。

 

 

ウトウの名は、アイヌ語で突起を意味する「ウトー」から付けられたという説が一般的だ。しかし私には、西行の歌や能の「善知鳥」の元になった善知鳥中納言安方こそが、ウトウの名の由来であると思えてならない。顔に突起をつけたウトウの不思議な姿が、髭を生やした公家のように見えるからだろうか。

 

【参考文献】

街・野山・水辺で見かける「野鳥図鑑」(日本文芸社)