センダイムシクイ 仙台虫食

英名:Eastern Crowned Warbler

学名:Phylloscopus coronatus

スズメ目ムシクイ科ムシクイ属

生息地:南アジア、東南アジア、東アジアに広く分布。日本では繁殖のためにやってくる夏鳥。

全長:13cm

鳴き声:チヨ チヨ ビィー

雌雄:雌雄同色

 

センダイムシクイの名の由来には諸説あるが、もっとも興味深いのは、「歌舞伎の演目である『伽羅先代萩』の登場人物の『鶴千代君』とさえずりを聞きなすことにちなんだ」(日本文芸社『野鳥図鑑』)というものだろう。

 

センダイムシクイのさえずりは「焼酎一杯グイー」とも「聞きなし」される

 

お家乗っ取りを企む一味の計略に乗せられ、廓通いの遊興にふける足利頼兼。頼兼は放蕩の末、隠居を命じられてしまい、家督を相続したのは幼い鶴千代君。お家乗っ取りをたくらむ一味は、その鶴千代君の命を狙うが……。

 

センダイムシクイの特徴は、頭の中央の灰色の線〈頭央線)。はっきりしない個体もいるらしいが

 

江戸時代に作られた「伽羅先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)は、奥州の架空の藩、足利家を舞台にした物語。そのストーリーが仙台藩の伊達騒動をもとにしたものであることが題名からわかる仕掛けとなっている。

 

よく似ているがメボソムシクイは目の上の線(眉班)が少し黄色っぽく、頭央線がない

 

「めいぼく」は、名木「伽羅」の高下駄を履いて廓に通ったといわれる「伊達綱宗」(足利頼兼のモデル)を暗示し、「先代萩」は古来より萩の名所として知られていた「仙台」が舞台であることを表している。

 

エゾムシクイも頭央線がなく、足が肉色をしている

 

「チヨチヨビィー」の鳴き声を「ツルチヨギミ」(鶴千代君)と聞きなし、そこから「伽羅先代萩」を連想しセンダイムシクイと名付けたのだとすれば、歌舞伎の作者もびっくりの、なんとも気の利いた話ではないか。

 

伊達騒動をまったく異なる視点で描いた山本周五郎の小説「樅木は残った」も著名。平幹次郎主演で、NHKの大河ドラマにもなっている

 

センダイムシクイの名付け親、あるいはこの命名物語を考えた人物に、心から敬意を表したい。

 

【参考文献】 街・野山・水辺で見かける「野鳥図鑑」(日本文芸社)