令和5年12月16日(土)14:00〜、秋川キララホールにて。


脚本・作詞/高橋 知伽江
演出/栗城 宏
作曲/飯島 優
編曲/沼井 雅之
振付/新海 絵理子
美術/高橋 知佐
照明/日下 由香
音響/佐藤 亜希子
衣装/市橋 幸恵
小道具/平野 忍
ヘアメイク/馮 啓孝
演出・振付助手/丸山 有子
音楽助手/紫竹 ゆうこ
舞台監督/仁 しづか


出演/
井口 阿くり:久保田 美宥

松橋 倫太郎 ほか:小山雄大

進藤 孝三 ほか:渡辺 哲
松橋 ベニ ほか:瀬川 舞巴

森園 コン ほか:佐藤 千明

楠見 ミドリ ほか:小松 詩乃

林田 ルリ ほか:黒木 真帆


ものがたり/
明治36年、3年間のアメリカ留学を終えた阿くりは、東京高等女子師範学校の教授となった。「女子体育を教える女性の教師」を育成すべく、スウェーデン体操、ダンス、バスケットボール等、当時の日本ではまだ未知のスポーツを学生たちに教え、世間から注目をあびていた。しかし、女性が運動することへの理解が無い時代。新聞で教育方針をたたかれたり、ブルマー先生と陰口を言われたり、むずかしい立場に立たされる。その頃出会ったのが若き軍人、松橋倫太郎だ。夢を追いかけて走る阿くりと、保守的な家庭に育って夢をあきらめた倫太郎。倫太郎が阿くりの窮地を救い、2人は惹かれあうようになる。しかし、ロシアとの開戦がじりじりと近づいていた。それは世界の平和を願う祭典であるオリンピックがアメリカで開催される年でもあった。日本のオリンピック参加、そして女子選手の参加を夢見る阿くりにとって試練が続く。
いつも笑顔を忘れない阿くりだが……。 
(公式サイトより)




わらび座『いつだって青空』は、日本女子体育の母と呼ばれる教育者、秋田出身の井口阿くりの評伝的ミュージカルだ。


2019年度のわらび劇場初演を経て2022年度から全国ツアーを行なってきたこの作品も一般公演ファイナルとのことで、いよいよ見納め。


そしてこの日は、小山雄大さんの出身地で久しぶりの凱旋公演でもあった。


アメリカ留学を終えた阿くりの指導者としての活躍に切ない恋模様を重ねたストーリーを、若手中心のキャスト陣で瑞々しく描いた。


もう何度も観てるのにしっかり泣いた。



日本女子体育の母と呼ばれる井口阿くりを演じた久保田美宥さん(左)。阿くりの強さと優しさ、場面ごとの思いを込めた歌声が美しかった。


その生徒ミドリなどを演じた小松詩乃さん(右)。不器用でダンスが上手く踊れない少女の劣等感と阿くりへの信頼を丁寧に演じた。




阿くりの生徒ルリを演じた黒木真帆さん。しっかり者だけれど恋を夢見る乙女でもあるルリちゃんに説得力があった。


冒頭の『秋田音頭』から始まり、歌にも演技にも誠実さが感じられた。


お写真は撮れなかったが阿くりの生徒 松橋ベニを演じた瀬川舞巴さん。阿くりの夢を受け継ぎ地元で教師となる副主人公的な役割を葛藤も含め生き生きと表現していた。


同じく生徒 コンちゃん役の佐藤千明さんは、遠慮のないキャラクターで笑いを誘う。


また留学先の校長役では教育者としてのスケールの大きさを見せた。



物語の語り手 進藤孝三や阿くりの勤める東京高等女子師範学校の校長などを演じた渡辺哲さん。


コミカルな場面もシリアスな場面もベテランらしい味わいで説得力があり、若手の多い座組を支えた。いつもながら見事な歌声も堪能した。



阿くりと心惹かれ合う松橋倫太郎をはじめ、4つの役を演じた小山雄大さん。阿くりとの出会いからの心の動きを繊細に演じ、ことに終盤の病室の場面は圧巻であった。


この作品、別バージョンのDVDはあるけれど、このキャストのものも映像で残して欲しいと観ていて思った。


この物語、この題材だからこそ若い女優さんたちの活躍がいっそう眩しくて、さまぞまな場面で涙腺を刺激された。


近年わらび座の公演では、カーテンコールで現在の状況と支援へのお願いが語られる。組織としての状況はまだまだ苦しいことだろうけれど、この作品を見て劇団の財産は「人」だなぁ、と改めて思い、若手の活躍に劇団の希望を感じた。