令和5年10月14日(土)、11月18日(土)、25日(土)、26日(日)19:30〜、古民家カフェ 蓮月にて。


構成/今井夢子

ムーブメント/美木マサオ

演出/ムケイチョウコク(美木マサオ/今井夢子/内山智絵)& all cast
音楽/市川真也

照明デザイン/松本 永(eimatsumoto Co.Ltd)

衣装/奥村そら(ムケイチョウコク)

演出補佐/遊佐邦博(大統領師匠)

演出助手/宇都亜里紗

撮影/朝比奈里奈

制作/野元綾希子(ムケイチョウコク)

主催 /ムケイチョウコク


出演・配役(ダブルキャスト)/

万華鏡作家:市川真也、窪田道聡

万華鏡作家の妻:内山智絵、水口早香

万華鏡作家の弟:佐野 功、橋田洋平

家政婦:大竹えり、大塚由祈子

蒐集癖:AGATA、スガヌマショウコ

音楽家:生田麻里菜、椎名しおり

人形遣い:SATOCO、美木マサオ

女:小林未往、菅波琴音


あらすじ/
時は現代。歴史街。
ここは万華鏡作家の所有する古民家カフェ。

芸術家や一風変わった趣味を持つ人々がサロンに集う、2階の座敷。
策略乱れる親族会議が秘密裏に行われる、1階喫茶室。
そして「アトリエ」と呼ばれる、中を覗くことの許されない奥座敷。
3つの空間を渡るのは、死か生か美か醜か、それとも孤独か、欲か。

見てはいけないものを覗き込んだとき。
決して再び現れることのない万華鏡の模様のように、
一瞬の心模様が回り始める。

(公式サイトより)




イマーシブシアターというものが、これから増えてくるのかもしれない。


ある人とそんな話をした。


配信やライブビューイングなど舞台を映像で見る手段も増える一方、体験が加わるタイプのコンテンツが増えて二極化する……という図式があり得るかもしれない、と。


そんなことを考えるくらい、この作品のインパクトは大きかった。


ムケイチョウコク『漂流する万華鏡』。


今年5月に同じ団体の『反転するエンドロール』という作品を観て(というかこちらもイマーシブシアターなので参加して)、登場人物として受けたインパクトや並行して異なる次元の物語を描く構成の面白さに惹かれ、次の作品も見よう!と思っていた。


『漂流する万華鏡』は上演期間の最初の頃に1回だけのつもりでチケットを取った。登場人物チケットというやつ。観客がそれぞれ登場人物としての設定を渡され、キャストの誘導に従って共に物語を綴っていく(←うん、説明がヘタだね)ものだ。


もう1種類、黒子チケットというのもあり、こちらは他で体験したイマーシブシアターに近く、同時多発的に演じられる物語を自由に歩き回って追っていくものだ。


住宅街にある古民家カフェに入って受付を済ませ、椅子にかけて待つ。注意事項や楽しみ方の説明の後、配役が告げられる。


その日、私は小石川樹という役をいただいた。




ネタバレ多めの小石川樹体験談↓


10月14日(土)、小石川 樹 役で参加した記憶を役の目線で書いたもの


衝撃的だった。


物語のど真ん中に立ってドラマティックな出来事を自らのこととして体験した感覚があった。


キャストから真剣な眼差しで見つめられ、問いかけられ、自分なりの小石川樹として答える。


これは後からしみじみ思ったことだけれど、登場人物チケットの参加者の答えは予め定められているわけではない。それを受けて物語や世界観を壊さないよう受けて繋げていくキャストの方々の瞬発力とそれを含めて進められる構成の巧みさが凄まじい。


参加した直後に追加公演の告知があり、当然のようにそれを予約した。3日間の追加公演(金・土・日)のうち最後の土曜と日曜ですべてのキャストが出揃う。2日続けて行くにはいくつか問題(別の予定とか)があったけれど、気持ちを抑えきれずにその2日を予約した。


この作品の登場人物チケットは、公演にごとにいろはの「い」から「わ」までの13枚。黒子チケットより枚数が限られるため激戦となりがちだし、回を重ねるにつれリピーターも増え、後半になるとキャンセルが出てもあっという間に(誇張ではなく分単位・秒単位で)売り切れていた。


そんな中、無事に追加公演の登場人物チケットをゲットしたものの、その日までにはまだ1ヶ月以上ある。その前にわずかに残っている黒子チケットで、あの世界を見つめてこよう、と心に決めた。


が、決めてはみたものの、もろもろの予定や家庭の都合などですぐには動けず、結局追加公演の直前の週末に2度目の、ようやく黒子としての参加を果たした。



黒子として黒づくめの服を選んで出かけ、黒い頭巾を身につけて黒いベールで顔を覆い、物語の中を漂う。


舟に乗せた灯りを手に、物語の中の人々を照らしたりもする。


11月18日(土)に黒子チケットで参加した時の感想


登場人物より自由度が高い黒子として、前回の参加とはまたまったく異なる景色を観てきた。


最初に参加した直後に発売された『漂流する万華鏡』のサントラを繰り返し聴いてからの参加だったため、音楽もいっそう印象に残った。


『漂流する万華鏡』ーオリジナルサウンドトラック


個人的にとても気に入っている曲がある。『旅に漂う』という曲なのだけれど、これが劇中のたいへんドラマティックな場面で流れるのだ。場と音楽の相乗効果でいっそう胸に染みた。


切ない思いが高まっていくようなメロディ。そこから『それぞれの模様』へのつながりは、心がほどけていくような感覚であった。


そして翌週。


1ヶ月以上この物語のことを考え、参加した方の感想を読ませていただいたりして、最初の参加とはまた異なる緊張感で会場に向かった。


他の方の感想を読んでやってみたい役があったが、年齢性別的にそれはないだろう、と思ったり、じゃあどの役かな、と予想したりしていた。


その日は、予想していたうちのひとつである「工藤はるき」という役をいただいた。



11月25日(土)、工藤はるきとして参加したときの感想


面白かった。


あるキャストの方ともう1人の登場人物チケットの方と深く関わる役で、それぞれの距離感や人称などを意識させられることとなった。


ある場面でキャストと真っ正面に向き合う(体勢的にも心理的にも)場面があって、役者さんの熱演に感動するとともに、その場面に至る展開の巧みさに舌を巻いた。


構成、すごい。


いや、この場面だけでなく、そもそもキャスト8名と登場人物13名がそれぞれの物語を同時多発的に生きて、その上で齟齬なくひとつの物語を紡ぐというのがそもそも凄い。


その上、音楽のきっかけやお互いの移動などのタイミングもきちんと噛み合っているのだ。どうしたらそんなことができるのか想像もつかない。



その翌日、千秋楽にまた登場人物として参加した。


この日はトキという役で参加することとなった。もうひとりの登場人物チケットの方(ベニを演じる方)と組になる役柄だ。



11月26日(日)、登場人物「ト」として参加した時の役としての記憶です。


これもまた前の役とはまったく異なる物語だった。


ベニ役の方がキャストの言葉に感情豊かに反応する一方、トキとしての自分は、置かれた状況に不安を感じ、座布団の上に座るのも憚られたり、曖昧な受け答えも多かったように思う。


前日の工藤はるきで謎だったいくつかのことを、反対側から目撃することになったりもした。


2階にいるとき、1階から工藤はるき役の方に語りかける悟朗さんの声が聞こえて、(あっ!)と思った。その日のはるきさんは、前日の自分と異なる判断をしたらしい。(なるほどその場合は、そうやって話を進めるんだ)などと感心した。


毎回、終演後に歓談タイムがある。これが、その日の体験をより印象的なものにしていたように思う。


深く関わりのあったキャストの方と、今度は自分自身として言葉を交わし、ともに同じ時間を体験した登場人物や黒子の方と交流する楽しさ。


小石川樹役だった日、前の週に同じ役を演じた方が声をかけてくださったり、黒子で拝見していて印象的だったやりとりの感想をお伝えしたり、はるき役の日は真白役だった方とお話ししたり、いつもあっという間に時間が経ってしまっていた。


閉店後のカフェが会場であるため、開演が19:30。遠いので終演後は早めに帰ろうと思いつつ、歓談タイムまでしっかり堪能してつい22時前後まで会場で過ごしてしまい、結局終電で帰ることになった。


物語だけではなく、人と出会う作品だったと思う。




作品の上演期間が過ぎ、アフターパーティも終わったけれど、参加した方々がいまだにネタバレを気遣ってfusetterを使って感想を書いたりしているのがとても素敵だ、と思う。。


この作品を愛した方々は皆、再演があることを信じているのだ。あの古民家がまた仄暗い物語に満たされ、糸山家の人々やサロンの常連やそれを取り巻く人々に再会できる日が来ると。


私も、その日を心待ちにしている。



最後に、歓談タイムに撮らせていただいたキャストの方々のお写真を、ともに漂った皆様へのお裾分けとしてアップさせていただきます。

















皆様、ありがとうございました。こうして見ているだけで、あの時間と空間が思い出されます。


順不同(だいたい撮らせていただいた順)、劇中でやり取りのなかったキャストの方にはあまりお声がけできなかったのが残念です。