平成25年2月9日(土)13:30~、わらび劇場小劇場にて。
 
脚本・演出/小沢瞳
 
出演/
魚屋の政五郎:尾樽部和大
政五郎の女房 お春(ダブルキャスト):古関梓紀、山口喜久子
長屋の大家 他:小沢瞳
 
 
さて、昨日見てきた冬の小劇場めおと人情ばなし『ゆめの革財布』。
小劇場は、わらび劇場と道を挟んだ斜め向かい(?)にあります。
 
 
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ポスターや魚の切り抜きなどが貼ってある入り口をくぐると、
中で出迎えてくださるスタッフの方々も時代劇みたいなカツラをつけていたりして、
始まる前から楽しい雰囲気です。
 
 
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この小劇場は、入り口で靴を脱いで下駄箱に入れるシステム。
しかも下駄箱にはずらりと長靴が並んで、なんともアットホームな雰囲気です。
 
座席は自由席。というか、雛壇状の客席に座布団が並んでいる感じです。
 
さて、すでにご存知の通り、
この『ゆめの革財布』は、落語の「芝浜」を題材にしています。
 
酒好きの魚屋が、海辺で拾った財布には大金が入っていたが、
そのまま自分のモノにしてしまっては罪になるし、仕事をする気もなくなるだろうと、
女房が財布を隠し、大金を手にしたのは夢だったと思い込ませる。
 
そこで一念発起しマジメに働いた魚屋は、とうとう自分の店を持つまでになる。
ある年の暮れ、夢だと言ったのは実はウソだったのだと告白する女房に、亭主が感謝し……。
 
……というようなストーリーで、舞台もほとんどこれに沿って進むし、
ラストの落語の落ちのセリフを言った瞬間、客席から拍手が起こったので、
観客の多くがこの落語を知っているのだろうと思うのです。
 
でも、展開を知っているかどうかに係りなく、
舞台上でのやり取りやセリフの面白さや、
にじみ出るそれぞれの心情に、目が離せなくなりました。
 
いい加減さと人の良さのにじみ出る、憎めない雰囲気の政五郎。
しっかり者で、キツイことを言いながらも、亭主に惚れてる感じが可愛いお春。
 
この二人の掛け合い、セリフひとつひとつに、
貧乏ながらも楽しい雰囲気が漂っています。
 
そこに突然大金が現れて……。これは一歩間違えばオオゴトです。
そのままフトコロに入れてしまって、つかまれば死罪になるかもしれません。
つかまらなくたって、呑んだくれ、自堕落になって、ますます働く気がなくなってしまうでしょう。
 
そこで一計を巡らせる大家とお春。
 
夢だったのだとお春がウソをつく場面も、テンポのいいやり取りでとても面白いのですが、
その直後の大家さんの変装しての登場場面は、もうすっかり腹を抱えてしまいます。
そして、「一生あんたと一緒だと思ってた」と言い残して出て行くお春にグッときました。
 
この辺り以降の展開は、自分の知ってる芝浜にはないんだけど、
そういうバージョンもあるのか、オリジナルなのか、
とにかくもう、すっかり引き込まれて何度も泣かされてしまいました。
 
特に、長屋仲間の家庭のピンチに、
お春との約束のために貯めた金をそっくり渡してしまう政五郎と、
あんたのそういうところに惚れたんだというお春にまたホロリ。
 
この日はメガネをかけて観劇してたので涙を拭くのが面倒なんだよ~~と思いつつ、
結局何度もメガネをずらして涙を拭いてしまいました。
 
元々が落語だからということもあり、もうベタといったらとてもベタだけど、
だからこそツボに入ると気持ちよく、笑いも涙もたっぷりの舞台でした。
 
大家役の小沢さんは、
導入の案内役から、大家や長屋仲間、借金取り、男や女や子どもまで、
安心感のある演技で、物語を支えていました。
 
落語のオチ(下げというのでしょうか?)のあと、おめでたい雰囲気のエンディング。
1時間15分ほどでしょうか、長くはないものの、充足感のある舞台となっていました。
 
 
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魚屋夫婦の政五郎とお春。お似合いの美男美女です♪
 
 
・オマケ
心を入れ替えてマジメに働く政五郎が、客席にも魚を売りに来て……。
大きな尾頭付き、座布団からはみ出していますw
 
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