平成30年9月29日(土)18:00〜、博品館劇場にて。

原作/オスカー・ワイルド 
脚本・演出/荻田浩一 

出演/
ドリアン・グレイ:良知真次
バジル(映像作家):法月康平

ヘンリー・ウォットン:東山義久
ヴィクトリア(ヘンリーの妻):彩輝なお
グラディス(ヘンリーの妹):風花舞

アガサ:剣幸
エイブラハム(探偵):風間由次郎
シビル(シビル):蘭乃はな
ジェイムズ(シビルの弟):木戸邑弥
アラン(刑事):村井成仁

自称映像作家のバジルは、街角で会ったドリアン・グレイと名乗る青年に惹かれ、彼の姿をカメラに収める。
次にバジルはドリアンを秘密のクラブへと誘った。
永遠の美と若さを追い求め、背徳と快楽を究める「悪の華」の主宰者ヘンリー・ウォットンはドリアンを気に入り、更なる不品行へと導くが、意に反してドリアンは前衛劇の女優シビルと恋に落ちる。

一方、探偵を使ってドリアンの消息を尋ねるアガサという女性がいた。
常に若々しく美しいドリアンの周辺で起こるのは、醜悪にして凄惨な事件。
彼には不思議な秘密があった。
(劇場サイトより)


『ドリアン・グレイの肖像』というと、何年か前に山本耕史さんがドリアンを、加納幸和さんがヘンリー卿を演じた舞台を拝見した。それ以外にも何度か舞台化されていたはずだ。

今回はミュージカルということで、どんな舞台になっているのか、楽しみにしていた。

冒頭、一人の若者の映像を撮ろうとする映像作家。

白いシャツ、黒いスラックス、金髪のカツラ。笑いながらその扮装をする若者と言葉を詰まらせつつその美しさに感嘆する映像作家。そして同じく長い金髪と白シャツ、黒スラックスの人物が登場して踊り始める。

それは映像の中のドリアン。物語の進行に寄り添い、汚れ朽ちていきなから踊り続ける……。

オスカー・ワイルドの原作を1990年代のロンドンに置き換えて、歌とダンスで綴る耽美と頽廃の物語。

時代は変えてあっても登場人物はほぼ原作通りで、ただ剣幸さんが演じるドリアンの過去の恋人と彼女に頼まれてドリアンを探す探偵はこの舞台のオリジナルであろう。

老いることのない美青年と彼に魅了されていく人々。

気ままな女優も意欲的な写真家も、退廃と悦楽を愛する者も、実直な刑事も、それぞれが溺れるようにドリアンに惹かれていく。

序盤は(美しいこと以外は)ごく当たり前の若者のようにも見えたドリアンが、愛と罪の遍歴の中で終盤に向けて妖しく禍々しく変わっていき、そして訪れる破滅。

過去の恋人アガサを演じた剣幸さんの歌声と、ドリアンの写し身を演じた長澤さんの身体表現が印象的だった。 

元わらび座 村井成仁さんは、物語後半でドリアンに翻弄されるアラン刑事を演じ、ドリアンに翻弄されて破滅していく演技を切実に見せた。

また序盤の「悪の華」の場面で、女優シビルの演技に合わせて妖しげな猫を演じる場面の色っぽさと低音の歌声にインパクトがあった。


妖しく美しい物語から抜け出して、夜の銀座へ。




この夜の底のどこかで、いま観てきた物語のような不思議な出来事が起きているかもしれない、などとボンヤリ思いつつ、家路についた。