平成29年8月19日(土)11:00〜、歌舞伎座にて。

一、刺青奇偶(いれずみちょうはん)
作/長谷川 伸
演出/坂東玉三郎、石川耕士

半太郎:中車
お仲:七之助
赤っぱの猪太郎:亀鶴
従弟太郎吉:萬太郎
半太郎母おさく:梅花
半太郎父喜兵衛:錦吾
荒木田の熊介:猿弥
鮫の政五郎:染五郎

二、舞踊
上 玉兎(たまうさぎ)
玉兎:勘太郎

下 団子売(だんごうり)
お福:猿之助
杵造:勘九郎


一、刺青奇偶
博奕好きの男が女房のために最後に出た大勝負

 度を過ぎた博奕好きで江戸を追われた半太郎は、下総行徳の船場で、身投げをした酌婦のお仲を救います。不幸続きの人生を送っていたお仲でしたが、純粋で真っすぐな半太郎に心を打たれます。生きる希望を取り戻したお仲は半太郎の後を追います。やがて夫婦となった二人は、品川の漁師町で所帯を持ちますが、半太郎の博奕好きは相変わらずで、貧しい暮らしが続いています。重い病を患ったお仲は、半太郎の右腕に骰子の刺青を彫り、博奕をやめるよう懇願します。しかし、再び賭場へと赴いた半太郎。イカサマ騒動を起こし、博徒たちに打ち据えられますが…。
 薄幸な夫婦の情愛を描いた新歌舞伎の名作です。

二、
上 玉兎
月の兎が餅をつく幻想を描いた一幕
 月に住む兎が、薄の広がる野原で餅つきをしています。狸と兎が討ち合う立廻りを、爺、婆をまじえてみせたあと、中秋の月夜に浮かれた兎は、いつまでも遊び呆けるのでした。
 月の兎が餅つきの姿で可愛らしく踊る清元の人気舞踊をお楽しみください。

下 団子売
江戸庶民の商いを軽妙に描いた舞踊
 仲のよい団子売の夫婦、杵造とお福が餅をつき、ほのぼのとした様子で団子をふるまいます。夫婦は面をつけ軽快に踊ると、次の街へと出かけていくのでした。
 息の合った夫婦の華やかで微笑ましい一幕をご堪能ください。
(歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」より)

{576F93CC-CCFF-499B-9F9C-61FEEF22964D}

ずいぶん久しぶりに歌舞伎座へ。

今年の八月納涼歌舞伎は第二部や第三部も魅力的で、特に『野田版桜の森の満開の下』が気になっていたのだけれど、諸々の都合により第一部のみ拝見することとなった。

{222DA5F3-9573-4430-9738-976CA8F70844}

演目は、『刺青奇偶』と舞踊『玉兎』『団子売』。

じっくり見せる人情物と明るい舞踊の組み合わせが楽しく、特に『団子売』の明るさと芸の確かさに心惹かれた。

{36ABEB59-8A6F-4E8B-8299-B94E8CBBB2E6}

『刺青奇偶』は、中車さん演じる半太郎の真っ直ぐな心根に、不幸な暮らしに心荒んでいたお仲が惹かれていく前半と、病に伏した女房に博打を止められた半太郎の想いを描く後半と、それぞれ見どころがあって面白かった。

前半で、お仲の気持ちが動く様子や、後半で半次郎が大きな決断を迫られる場面の葛藤などが印象に残った。


勘太郎くんの『玉兎』は月のウサギの餅つき姿が愛らしく、子どもらしい小さな手足をきちんと伸ばして型を決める様子に場内からもしきりに拍手が湧いた。

続く『団子売』は、パッと明るく華やかな印象であった。

夫婦者の団子売りが、餅をついたり団子を振る舞ったりする様子を踊りで描いていく。

猿之助さんの演じる女房と勘九郎さんの亭主の息の合った踊りは、コミカルな中にもぶれない美しさがあって、惚れ惚れと観入った。


久しぶりに訪れた歌舞伎座は、地下鉄の東銀座の駅を出たところからお土産屋さんが並び、お祭りめいた賑やかな雰囲気であった。

歌舞伎座の中でも、多くの人が買い物や食事を含めた芝居見物を楽しんでいて、なるほど、こういう芝居の楽しみもあるよなぁ、と改めて思ったりした。