四七日ー死後28日目の四審は伍官王(本地仏は普賢菩薩)の法廷である。

ここでは五戒の中の妄語について問われることになる。

 

すなわち嘘をつく、二枚舌を使う、悪口を言う、詭弁を弄するなども含めた総称を

妄語という。

 

釈迦は共同生活に支障をきたすような妄語は、殺生や盗みと同じように重い罪とみなし、

これに背いた修行僧を教団から追放した。

釈迦がこれほどまでに妄語を重くみたのは、お互いの信頼関係が教団、ひいては社会生活

の根本となる、とみたからである。

信頼感がなくては社会は乱れ、醜い争いの場と化してしまうであろう。

 

大きな天秤である「業の秤」によって嘘が暴かれ、またその罪の重さが計られるや

罪人は獄卆によって舌を引き抜かれ、迎えに来た獄卒たちによって「火車」に乗せられ、

第五の地獄「阿鼻叫喚地獄」へと直行させられるのである。

 

この「阿鼻叫喚地獄」の拷問の内容は、他の地獄とは比べ物にならないほど大掛かりで、

罪人が受ける苦しみもまた大きいものである。

獄卒たちは言う。

「妄語は最初の罪の炎である。その炎は海原も焼くことができる。まして人を焼くことなど

草木の薪を焼くようなものだ。」

 

今昔物語巻17(本朝付仏法)第40話に

「僧光空依普賢助存命語 第四十」がある。

 

近江の国に金勝寺という寺院があった。その山寺に、日夜法華経を読誦する光空という

僧が居た。またその国に兵平介という武士が居て、光空に帰依していたが、この者は

かつて、国家に反乱を起こした平将門の一族で、荒々しい気性の持ち主でもあった。

兵平介の妻は年若く、見目麗しい女性であった。

兵平介の家来の一人が兵平介の留守中に、その妻に言い寄るも拒まれ、それを恨んで

兵平介の妻と光空との間に不義密通があったと兵平介に告げ口をしたのである。

兵平介はこれを聞いてたちまち怒り、ことを確かめもせず、まず最初に僧光空を殺そうと

思い、山寺に行き、謀をもって僧光空を山の中に連れて行き、やにはに木に縛り付けた。

そして光空が恐れおののくのもかまわずに、家来をして弓をしぼりとり矢をつがえ、光空の

腹に向けて矢を射るように命じた。

 

                                           つづく