●歩かねばならない

長く寝込んでいると、用が溜まる。

節約してケチっていたら、物が足りなくなり、こういう時に限って次から次へ物が壊れていく。

1 時計の電池が切れた

2 十年ぐらいはいていた皮靴が二足とも敗れた

3 ジーンズが破れ、自分で縫っても股の破れが広がり、捨てるしかない

4 皮膚炎の薬が切れた

5 自転車のブレーキが駄目になった

6 10年つかっていたカーテンが3枚一度に腐り落ちるように破れ落ちた

どこからやろうと思うが、一つずつやらなければさらに溜まる。こういう時、パソコンや冷蔵庫やエアコンや洗濯機が壊れると怖い。

パソコンがないといろいろ調べられない。

冷蔵庫がないと食料保存ができず、買い物に行く回数が増え金がかかる。冬はなんとかなるが夏は冷たい水を飲めないのはつらい。

夏はエアコンがなくても平気だが、冬は死ぬ。以前数年壊れたまま我慢したら、朝から寒さに耐えられず、電子レンジで熱燗を飲むようになってしまい、体調を壊し、熱燗を飲まないために電子レンジを捨て、結局エアコンを買った。

エアコン、パソコン、冷蔵庫、洗濯機は必需品で、これが壊れると10万円ぐらいかかり、10年に一度程度の買い替え時期の恐怖に怯えている。今は冷蔵庫と洗濯機が危なくなってきている。いつまでも買い替えることができる自信はない。生活保護を受けている人は大変だが、これらがないと普通には生活できない。

パソコン、エアコン、冷蔵庫、洗濯機のうちスマホは小さいパソコンだからパソコンはいらない。洗濯機はコインランドリーがある。エアコンは安い電気ストーブでもなんとかなる。冷蔵庫も安い小さいのがある。こういうもので乗り越えている人がいる。

自転車移動だから、雪が積もってしまったので、1日雪が溶けるのを待ち、靴を買いに行った。リーガルの好きな靴があるが、昔は1万円ちょっと買えたのに、今は同モデルがモデルチェンジして2万円のシリーズになっていて、リーガルはもう手が出せない。

ネットでは1万6千円台で以前のシリーズの在庫があったが、ネットでの買い物は商品受け取りに自宅待機していなければならないのが嫌だ。

補充、修理維持しないと生活は不便向かって傾いていく。

足が痛いから1日目は何も買えずに終わった。

二日目にホーキンスの革靴を買った。スニーカーは買わない。黒い革靴は二足買い、交互によく磨きながら履くと十年もつ。スニーカーはすぐ汚れてしまい。クリームで補色して黒い色を維持することができない。

革靴は内部が汚れ、人の家を訪ねる時に玄関で汚さが目立つから、訪問用の靴もいる。

皮膚薬は小さいからポケットに入った。

ネットで調べて電池交換できる店を探したのになくなっていた。

一度、靴を置きに家に帰った。そのまま疲れて再び買い物に出る気力はなかった。

三日目に激安衣類販売店に電話してカーテンの在庫を調べ、2枚で1500円の激安品をゲットして得した。普通の店なら安いもので1枚2000円近くする。店によって物の価格差が激しい時代になっている。いろんな店に行くほど得をする。ブランド以外、品質はどれもあまり変わらない。物があふれているから、たくさん店を回れば安井ものがみつかる。

家に戻りカーテンを置き、再び買い物に行き、ジーンズを買った。リーバイスは高いから、安い無名のメーカーのジーンズも買った。リーバイスも若者用にデザインされたものが多くなって買いにくくなった。昔はストレートかスリムかぐらいしか確かめなかった。ジーンズの裾上げが込んでいて1時間待たなければならなかったのでスタバでコーヒーを飲んだ。

4日目は自転車を治した。今の自転車は9年目になった。そろそろ買い替えだと、店員さんにいわれ、怯えた。気に入っている乗りやすい自転車なので今のままがいい。新品をくれるといわれても今の自転車がいい。変化は求めない。

時計の電池交換に行ったが、ネジがさびて蓋があかなかった。

時計工房に行き、電池交換できた。丁寧に手入れしてもらえた。二年でひどく時計のネジが一気にさびた。気に入っている時計で、高い時計はもう二度と買う余裕はないので、次回は電池が切れる前に一年に一度電池交換して長持ちさせようと思う。今のが壊れたら、もう一生ダイソーの300円の時計でいい。時計屋さんをいろいろ回ると2000円台でも綺麗な時計があるし、ABCマートオリジナルの2000円台の安い靴も靴底が滑らないようになっているし、かっこいいものがあった。

みんな安くていいものを求めている。ABCマートやユニクロの恐いところは街や電車の中で同じ靴や服の人に出合ってしまいきまづい思いをする。相手が若い女の子の場合、申し訳なくなる。大量生産の服や靴を買う場合、1年以上寝かせてから身につけると同じ買い物をした人に出会わない。1年以上経って出合っても、相手は安物を着古して見違えるほど汚くなったのを着たおじさんだから別に気をつかわなくてすむ。

痛み止めを飲んで4日も買い物によく歩いた。これでまた数年買いものに悩むことはなくなった。パソコン、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、シャワーが壊れないことを祈る。

自転車移動なので杖はつかなかった。

この4日で足がかなり動くようになった。リハビリになった。

一人暮らしだから歩かねばならない。

周囲をみると要介護の人は介護してくれている人がいる。

私にはいない。

自分で動かなければ生活が止まる。これが一番のリハビリで、健康維持になる。

動かなければ部屋に悪臭が出始めるし、精神的な刺激は減り、不便不快な思いをする。

親や同居人がいる人は代わりに動いてもらえ、寝込んでいられるから回復が遅れる。手遅れになり戻れなくなる、という考え方だってできると思う。筋肉は確実に動くし、重心感覚が狂うから、動きにくい。動きにくいまま衰えれば衰えるほど、余計に動きたくなくなる。

動きたくないから動かないのは当然で、動きたくないのに動かなければならないためには孤独である必要がある。人の世話をしたい人はとても多い。私だって毎日エレベータを降りるたびに、ベビーカーが乗ってこないかな、と考えている。ベビーカーがのりやすいように、ドアのストッパーをおさえ、子供に手を振られるのが嬉しいし、若いお母さんにお礼を言われたい。誰だって金以外の親切はしたい。

私にだっていろいろやってくれるという人はいるが、私にはお金以外の親切はいらない。これまで私が自分のことをしないでいたら病状は今よりかなり悪化していたように思う。

本当に動けなくなると、生活が止まる。

そのことをいつも忘れずに、だから出掛ける準備をし、どんなに痛くても靴を履き、歩かなければならない。