クトゥルフ2015の話 | ダイの日常

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ブログの管理人、ダイの日常をつれづれと。最近多いのは出かけ先の出来事、ドール、ペット、TRPGです。

さて、せっかくですので2015の説明でも…





どうも、ダイです。





更新が空いてしまったので本日は二本立てということにしました。
先ほどの日記でも書いた「クトゥルフ2015」のレビューを書いてみようと思います。


・クトゥルフ2015とは
ざっくり言うとクトゥルフTRPGのサプリメントです。
TRPGのサプリメント、というもの自体の解説は申し訳ないですが別の解説ブログや本をご覧ください…めっちゃ長くなっちゃうんです。

で、このサプリに似たものでクトゥルフ2010というものがあります。
クトゥルフTRPGが流行るきっかけになった「クトゥルフを現代日本で遊ぶ!」というキャッチコピーで発売されたものです。
これは当時あまり描かれていなかった「現代日本ならではの技能、知識の掲載。あるいはその時代に沿った社会の闇、宗教の話」が中心です。
気になった方は是非購入してみてください。読み物としても面白いですよ。

で、クトゥルフ2015と2010の決定的な差を見ていこうと思います。この差から考察したことも書いてます。
内容に触れている部分もあるので、買うまで中身を知りたくないという方はここでUターン。


あと、めっちゃ長いですよ。






いいですか?








いいですね?


・色の違い、○○宛の違い

まず、一番大きな違いは「載っている情報の種類」です。

2010→現代日本に対する知識、またそれらのデータ化

2015→2015年現在流行しているオリジナルシナリオ、探索者制作のヒント


根本的にこの二つの本はここが違います。
2010のほうは「今までクトゥルフTRPGを近代イギリス、アメリカなどで楽しんで来た人が日本を舞台にする為の本」であるのに対し、
2015のほうは「2015年現在多様化してきたプレイスタイル、幅広い探索者のニーズに応えるべく作った本」なのです。

つまり、2010年の日本を舞台にしたシナリオの為の本なのか、2015年にクトゥルフTRPGというものに参入する人の為の本なのかの違いがあるのです。
片やシナリオの為の本。片やPLの為の本。これは明らかな違いです。


また、載っている情報の中にも明確な差があり、例えば2010には日本の妖怪や低級の萬の神のデータが載っています。
また、近代日本、あるいは世界中で発生した事件も掲載されています。
加えて、パワースポットや心霊スポットの情報まで載っています。

これらは明らかに探索者が巻き込まれるしかない要素、どうあがいてもかなわない存在です。

(その証拠に基本ルールブックには野生動物のデータがあります。)


それに対して2015のほうには、例えばアーティファクトと呼ばれるものの情報があります。
日本の霊的物質が中心にまとめられているので、やはり現代日本で遊びやすくする為の情報なのでしょう。
これは登場人物が使用することを前提に掲載されていました。
恐らく、事件の発端として使われるというより、シナリオの道中で入手し敵が味方が使用できるようにする為です。

もしこのアイテムがあれば、探索者は不可思議な存在や霊的存在にも勝利できるかもしれません。


流石に神格相手ではどうにもできないでしょうが…


また、その登場人物、探索者のサンプルの中にも「闇医者」「アイドル」など、マンガなどでよく取りざたされる職業が追加されていました。
狂信者や深きものとの混血種の作り方すら記述されていました。

これは近年多様化してきたプレイスタイルを補う為、またそれらを肯定できるようシステムの側からデータを作ったとしか思えません。

最近は既存のキャラクターを再現することを望むプレイヤーも多くなってきました。
(実際、職業として狂信者でプレイしたいって人はよくいます。)

つまり、2015はいくらかハリウッドスタイルで冒険をする為のデータが揃っているのです。
暗く陰惨な事件を経験するには少し派手なデータが大量に載っていました。ハック&スラッシュ向けです。
まるで、ファンタジー世界で怪物を相手にして如何に戦うか、というようなものだったのです。


・参加者が求めていく道


近代用の2010と2015の間にもこれだけはっきりとした差があるというのは、5年間の間にクトゥルフTRPGというものに対して求められるものが変化しているという事もあると思います。
陰惨な事件を命からがら逃げるというより、事件に対して前のめりに勇敢に戦い、結果ハッピーエンドをつかむ。
その為に超常的な存在と戦わないのであればこちらも超次元の力で抵抗をする…

そういったスタイルに少しずつ変更があるのかなと思います。


俺は昔からクトゥルフTRPGをやっているわけではありません。
なのでクラシックスタイルにもハリウッドスタイルにもあまり拘泥はしていません。
むしろ、危惧しているのはこれらのスタイルがはっきりと認知されず、卓ごとにあるはずのスタイルが発表されないまま募集がかかってしまうことです。

その部分での勘違いがあるままに卓がスタートすると大体の場合探索者とKPの間、あるいはシナリオの間で齟齬が発生します。
スタイルの間に品質の差はなくとも、方向性の違いははっきりと存在しているのですから。

臭いや気配を感じ、影に怯え恐怖から逃げるのがクラシックスタイル。
そこには不可思議な力はあまり存在せず、人間のか弱い力とお粗末な知恵を使ってなんとか自身から被害をそらす…それくらいが精一杯でしょう。

逆に言えば物陰に隠れ息をひそめる緊張感が楽しめるのがこのスタイルの特徴です。

一方、拳銃を構え、勝てるかわからない敵に対し、挑みかかる。ヒロインや世界を、そして自分の誇りを守る為に戦い、時に散っていくハリウッドスタイル。
途中で魔術を手に入れたり、アーティファクトと言われる伝説的なアイテムを入手することでなんとかクリアできるように設定されたそれらは「ボスを撃破する喜び」を目的として作られています。
クラシックスタイルでは絶対に倒せない相手がハリウッドスタイルでは撃破できるのです。


よく聞く話として、
「ボスが序盤で出てきたから倒そうとしたら惨殺された!バランスがおかしい!」
というのがあります。
多分、クラシックの卓でハリウッドの行動やっちゃったんだろうなぁ…と考えます。KPから「この脅威からは逃げたほうがいい!」という情報も出てると思うんですが、現場を見なければなんとも言えません。


逆の悲しい話としては「ヒロインを助ける一番の盛り上がりで自分を守る為に逃げ出した為にドラマがないままシナリオが終了し全員消化不良」というのもあります。
これも、恐怖から素直に逃げ回りすぎたんだろうなぁ…と思います。
こっちの場合もKPがPLに対して「勇気を出して彼女を助ける?」って言葉が出てたりするんですけどね。
助けないほうがいいイベントだった場合は「彼女を助けようというのは無謀で愚かな行動だ。それでもやる?」
って言葉に変化するはずですし。


・自分の心に正直に


長くなってしまいましたが、何が言いたいかというと、
「これらの本を正しく使う為には自分がどういったスタイルの話をやりたいか明確にすることが重要である」
ということです。
クラシックがやりたいのか。それともハリウッドがやりたいのか。

今までの「比叡山炎上」「クトゥルフと帝国」はその舞台自体がハリウッド向き、クラシック向きとはっきり分かれていました。
戦国時代で刀や槍をふるい、一騎当千の力で神話生物を切り倒すシナリオ、冷戦が続く国でスパイとして敵の基地に潜り込み、情報を盗んで生還するシナリオ…

しかしこのサプリは2010と類似した雰囲気を持っています。その上、現代日本でのシナリオがあまりに多く公開されている為、現代日本舞台のシナリオにはハリウッドスタイルとクラシックスタイルが混在しているのが現状です。
しかもこのシナリオたちにも明確に「○○スタイル向き」という作者の意図があったりなかったり様々です。
その為にシナリオのスタイルがPLと合わないことがあると、先ほど記述したような悲しい事件が起こってしまうことがあるのです。


これを防ぐ為には自分がどのスタイルをやりたいか宣言するのかがとても重要です。KPはもちろん、同じ卓を囲んだ他のPLに話しておければあなた自身が活躍するチャンスが他の人から回ってくる可能性も上がるでしょう。
クラシックをやりたい人には緊張した繊細な描写のシーンを任せられるし、ハリウッドをしたい人はラスボスとの戦いの中で止めになる一撃をお見舞いする見せ場が来るでしょう。
「探索者の見せ場を作る」というのはあくまで探索者たちで作り、KPの協力があって成り立つことです。
お互いの探索者が手柄を取り合えば碌なことになりません。大体の場合がPL同士の喧嘩になってしまいます。
これは協力して遊ぶトークゲームとしては最悪の展開なのです。


・まとめ


とっても長くなってしまってた…
ここまで読んでくださってる方、ありがとうございます。

このクトゥルフ2015をざっと読んだ結果、俺は上のようなことを感じました。
これは如何にクトゥルフTRPGの経験が多かろうとこの本を実際に読み、2010と比較しなければわからなかったことだと思います。
(俺はそんなに経験ないんですけどね)

ルールブックというものはあくまでルールが書かれているもの。そのルールが必要とされているから生まれてくるもの。
そう考えるとこの本の価値はルールブックというもの以上の価値があると思います。KPでもPLでも思ったような活動が出来てない人には是非読んでほしい。

プレゼントしてくれた友人には本当に感謝しています。今度KPやるからね!待ってろよ!





それでは。