※大宮妄想小説です

オメガバース(α、β、Ω)のある世界線で生きている二人

お話の都合上、メンバーの年齢差やにのちゃんの家族構成(にのちゃんは大家族)、田舎育ちなど全て妄想

 

 

 

 

「二宮和也君。年齢は十八歳ですね。はじめにこちらの記録に間違いがないか確認させてください。最初にご実家のほうで診察を受けたのはいつですか?」

 

 

上京したその足で直接訪れた大学病院は、和也が入学する大学のキャンパス内にあった。

 

診察室のような小部屋で和也と向かい合っているのは、どう見てもまだ二十代と思われるどこかミステリアスな雰囲気の美しい青年である。

 

だが松本潤と名乗るこの白衣姿の男が、和也の第二性支援担当者なのだという。

 

 

「高校に入学した頃です。学校の健康診断のときに引っ掛かって……」

 

「受診した結果、未分化と診断されたわけですね。すぐにセンターとつながったんですか?」

 

「受診した病院の先生がセンターのOBだったらしくて、そのあたりはスムーズでした」

 

 

当時の混乱を今でも昨日のことのように思い出すことができる。

 

実家からほど近い病院で和也を診察した年配の主治医は、和也が「青年期第二性未分化症候群」──臨床の場では単に「未分化」と呼んでいるらしい──と診断されたことについて、そして考えられる対応について、専門用語を嚙み砕きながら丁寧に説明してくれた。

 

だが未分化という概念すら初耳だった和也にとって、その説明を理解するのは至難の業だった。

 

主治医が口にした断片的な単語だけが脳裏にこびりついた。

 

未分化、リスク、不安定なフェロモン、危険、投薬、継続的な支援。

 

和也を安心させようと、大丈夫だ心配ないと繰り返す両親の笑顔が、かえって和也を不安にさせた。

 

しかしその両親こそがきっと一番心を痛めているのだと思うと、和也も不安な顔は見せられなかった。

 

要するに和也の体は、第二性が明らかになるべき時期を過ぎてもなお、αβΩのどの性にも分化されていない状態であるという。

 

いわゆる「子ども」の時期を過ぎた未分化の体は非常に不安定で、放置すれば様々なリスクがある。

 

まずとるべき対策はフェロモン調整のための投薬である。

 

加えて心身ともに継続的なケアが必要となるため、第二性包括支援センターなる政府機関からのサポートを受けることを勧められた。

 

 

「センターの人間と直接面会したことは?」

 

「ありません。実家は辺鄙なところですし、俺はまだ若いから未分化のリスクもまだそこまで高くないと言われて。でもこまめにメッセージのやりとりはしていました」

 

 

センターからの連絡は不定期だったが、少なくとも二週間に一度はメッセージを受信し、和也も欠かさず返信した。

 

内容は体調の確認やカウンセリングのほか、生活上のアドバイス、果ては進路の相談まで多岐に渡り、第二性関連の福祉というのは随分と手厚いのだなと感心したものだ。

 

 

「ご実家は東北の方なんですね。……確かにこのあたりにはセンターの支局もありませんね」

 

 

松本は手元にある資料に目を落とす。

 

和也のカルテのようなものだろう。

 

 

「高校に通っているあいだは投薬で落ち着いていましたか?」

 

「はい。でも段々と薬の効きが悪くなってきたみたいで」

 

 

高校三年生に進級した頃から体調を崩すことがぐんと増えた。

 

体温が乱高下したり、急な目眩に襲われて動けなくなったり、高熱が何週間も続いたり──主治医に相談し、薬の量を増やして少し持ち直したものの、ここ一年近く綱渡りのような生活だった。

 

これ以上薬の量を増やすと内臓に負担がかかると言われたこともあり、家族にもひどく心配をかけてしまった。

 

進学先を地元ではなく東京にしたのは、主治医とセンターの勧めがあり、両親と相談して決めたことだ。

 

東京に住めばより専門的な治療とサポートを受けることができるし、和也の状態を考えるとその必要があるのは明らかだった。

 

この大学を選んだのも、センターの研究部門がこの大学の医学部内にあり、支援を受ける上でなにかとスムーズだろうと考えたのが大きな理由の一つだ。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

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