ベッドから起きあがろうとすると、
頭が重すぎて起き上がれない。
人間の頭が身体の中でも特に重いことは知っていたが、
まさか自分の頭がこんなに重く感じるとは想像したことが無かった。
その上、ベッドの柵に紐で腕が縛り付けられていた。
せん妄状態の時に自分で喉の管を引っ張ってしまったらしく、
身体拘束がなされていたのだった。
意識ははっきりととしてきた。
何より先に思ったのは、
職場に連絡しなくては!
ということだった。
しかし、気管支切開しているため声も出ない。
メールをしようと枕元近くに置いてあったスマホを取り出した。
スマホがいつもよりも重く感じられ、
一瞬、
自分ののスマホだろうか?
と疑った。
そして、寝たきりでいつ退院できるかもわからないのに、
“あと1週間くらいで復帰できます、
申し訳ないのですがそれまで休ませて下さい云々”
という長文の謝罪メールを職場に送った。
慌てて夫に、職場に直接電話して詫びてくれともメールした。
死にかけてもなお、
職場に自分の不在で迷惑がかかることを恐怖に感じていた。
非正規で最低賃金に近い時給で、
ボーナスはおろか寸志すらもらったことはないのに。
休んだら当然無給だ。
倒れる前にも、休みたくても我慢して
病院にも行かずに職場へ行って、
結局悪化して、
それが正解だったのだろうか。
…なんて愚かなんだろう。
今ならそう思えるが、その時は必死だった。