手術の次の日あたりから寝転んだままでリハビリを始める

ずっと声を出していないとストレスが溜まるということで

カニューレを声を出せるカニューレに変えて発声練習をする

多い時は230分に一回、

ナースコールで痰の吸引をしてもらう

カテーテルを喉に突っ込むので痛い

かと言って吸引をしないと息ができなくなり苦しい

ベッドの上で自分で歯を磨けるようになる

ドレーン4ヶ所を、日をまたいで少しずつ抜いていく

尿カテーテルを抜く(激痛)

部屋のトイレへ行けるようになる、ただし転倒の危険があるので毎回ナースコールをしなければならない

抗生剤の影響で水下痢がつづく

下痢止めを毎食飲む

下痢止めが効かず、下痢があまりに酷いので、経管栄養に加えてゼリーを鼻から胃に入れる

入院して二週間くらい初めてシャンプーしてもらい感動する

リハビリで歩行器で歩けるようになり感動する

経管栄養のチューブを鼻から抜く

食事を取れるようになり感動する

リハビリで自力でで歩けるようになる 

カニューレを首から抜く(激痛)

首を押しながら声を出せるようになる

20日ぶりくらいにお風呂に入って感動する

気管支切開で喉に大きな穴が空いてしまい、

自然に治りそうにないということで

穴を閉じる手術をする

パルスオキシメーターを外せるようになる

退院

ICUにいる時は、あれだけ苦しく死にたいと願っていたのに 

気がつくと生きていた。


コロナ禍で家族との面会は一切できなかったが、

不思議と寂しさは感じなかった。

看護師さん達が目まぐるしく忙しい中でも、

常に寄り添ってくださったからだろう。


せん妄状態の中、夫の手だと思って握った手。

優しく握り返してくれたのは顔も見えず、今となっては名前すらわからない看護師さんだった。


きっと本当に死んでいく日も

側にいてくれるのは、

家族ではなく、名前も知らない誰かなのかもしれない。


それは決して寂しいことなんかではなく、

人間社会の尊い一面なのだと、今は思う。



・首3箇所ドレーン

・奥歯にドレーン

・気管支切開、カニューレ

・経管栄養

・尿道カテーテルにオムツ

・抗生剤点滴


・起き上がれない

・声が出せない、喋れない

・少ししか口が開かない

・息苦しい

「トントン、おはよう!」

朝になり、

聞き覚えのある爽やかな声がした。


口腔外科の先生が診察にやってきたのだ。


意識がはっきりして、先生に会ったのは初めてだった。

ショートカットで颯爽としていて、眼鏡をかけた素敵な女性だった。


手術前など、せん妄状態で

おかしなことを訴えていた私に対しても

この先生は、

手術について納得するまで理論的に説明をしてくれていた。


主治医の年配の男性の先生もいたのだが、

子供に説明するような口調で、

ざっくりとした説明しかしてくれなかったのだ。


思い返すと、

入院前に最初に異変に気付いてくれたのも女性の先生で

入院中、総合病院の激務の中にもかかわらず

時間をかけて説明して対応してくれたのは

女性の先生だった。


今回たまたまそうなっただけかもしれないけれど、

圧倒的に男性医師が多く女性医師は少数派なのに、

ピンチの時に救ってくれたり

親身になってくれたのは女性医師だった。


そんな中、

東京医大の女子入試差別の問題を思い出さずにはいられなかった。

この事件が騒がれた当時は怒りを感じながらも、

意識しないまま過ごしていた。


しかし、

考えれば考えるほど、あまりにも理不尽で

現実は、こうして女性医師に何度も助けられると悔しくて仕方なくなった。


本当は医師になれたのに、

女というただそれだけで

なれたはずの医師になれなかった女性が、

日本にはたくさんいるのだ。


入院中の精神不安定なのもあってか

どうしようもない怒りと

先生への感謝の気持ちがごちゃ混ぜになってしまい

涙が溢れてきた。











手術の次の日の夕方、

入院から10日経っていた。


気管支切開して声も出せなくなり、

ベッドで身体を起こすことすらできず

オムツをしているにも関わらず、

何故かパートの仕事への復帰メールを送ってしまった愚かな自分。


とにかく少なくとも自分一人でトイレに行けるようにならなくては、と焦っていた。


頭は重く、ふらふらとするが

なんとか半身を腕で支えることができた。


よし、動けるぞ。


今度は寝転んだ体勢のまま、

ベッド脇に付けられている柵を持ち上げて外した。


そしてそのままもう一度、半身を起こして

ベッドから身を乗り出そうとした瞬間、

そのまま、

顔から床に落ちた。

ベッドから転落したのだった。


個室で一人きりだったが

大きな音がしたらしく、

慌てた看護師さんが飛んできた。


「どうしたの?

えーっ!ベッドから落ちてる!!」


看護師さん2、3人で身体が持ち上げられるのが

わかった。

「びっくりしたよー!

大丈夫?」

看護師さんに優しく声をかけられて、

自分が情けなく涙が出そうになった。


鼻がツーンとして痛い。

落ちた瞬間、前歯が折れたかと思ったが、

舌で確認したら折れてはいなかった。


頬骨が折れているかもしれないので

後日レントゲンを撮ることになった。


そして、まだせん妄状態が抜けきれていないと判断されたのか

引き続き、腕をベッドに縛られ

身体拘束されることになった。


落ちた後になって、

身体とベッドが管で繋がっており、

オムツだけでなく尿管ステントが着いていることに気付いた。


トイレなんて一人で行ける状態じゃないし

行く必要すらなかったのだった。