中国にとっては、重要性が高いウィグル自治区
中国経済は、東西格差が顕著。・・・東は豊かで、西は経済発展の遅れが目立つ。
東部(北京、上海、南京、天津など) 西部(チベット、新疆ウィグル自治区など)
しかし、中国にとり、ウィグル自治区は、重要性が増す一方の地域だ。
1 地政学上有利な3つの高い山(アルタイ山脈 デングリ山脈 クンルン山脈)がある。
2 地下資源が豊富な2つの盆地(ジュンガル盆地 タリム盆地)がある。
石油、天然ガス、石炭、その他にも多種類の鉱物資源があるが、中央に奪われている。
★天然ガスは全国1位 石油は3位・・・張り巡らされたパイプラインで、運ばれる(下図参照)
かつては台湾・チベット・ウィグルの独立を警戒し、今は香港・内モンゴルへの警戒心も加わる。
・漢族は自らを「中華」と美称し、周辺諸民族を見下す思想を持つ。
⓷ 政権維持の為の「大漢民族主義」(国民の9割以上が漢族を占めるから)
国民の無条件的な支持を得る為、孫文や蒋介石が唱えた「民族主義」を持ち出す。
しかし、それは中国人全体の「民族主義」ではなく「漢族の民族主義」だった。
・ウィグル自治にある、民族学校の閉鎖
・ウィグル語の制限 ・ウィグルの歴史の歪曲
・ウィグル人と漢族との結婚の奨励
これらで、「漢族になれ」という同化の方法を取り、差別が日常的に行われた。
多民族国家である中国にとって、これらは反感を産む、危険な動きでもある。
・近年、「ウィグル問題」や「香港問題」は、国際社会の関心を引いているが、
前から遠藤氏は、一党独裁政治色が強かったのは鄧小平 と言い切っている。
毛沢東より人間味が無く(意地が悪く)、習近平の父は標的にされたのだ。
彼女は、敗戦後の1946年に遺され、47年秋に「長春の惨劇」を経験している。
一斉に電気が消え、ガスが止まり、水道の水も出なくなり、共産党軍による
食糧封鎖が始まり、冬には零下36℃まで下がる長春で暖房無しで生き地獄を
味わい、48年9月に脱出できたが、一番下の弟は餓死したと言う。
そういう経験をされているからこそ、中国や米国などの動向を調べる執念は
他の著者よりも優れている と私は思っている。
学術的なレポートの最後は、著者の体験が綴られていた。
著者は1977年でウルムチで生まれ、両親はウルムチ近郊で農業を営むご一家だ。
1954年(新疆ウィグル自治区が出来る1年前)中共が「新疆生産建設兵団」★を設立。
★独自の準軍事的組織で、当初は退役軍人で構成され、学校・病院・道路の建設が任務だった。
★270万人の殆どが内陸部から移住して来た漢族で、郊外に住宅地や農場を建設していく。
★政府が美しい旧市街を「再開発」予定地に指定した結果、地域一帯はブルトーザーで破壊され、
また、兵団の後押しもあり、90年代~2000年に漢族の中国人移住者が押し寄せ、派手な高層
マンションに住み始め、ウィグル族を故郷の地から追い出そうとする政策を数々と推し進めた。
2000年頃 著者の地域も「兵団」に併合されて、極少数のウィグル人もいる。
2000年頃、卒業後、現地の国営鉄道に就職。中国政府のプロパガンダを信じ、
2006年には、中国共産党に入党し、平穏な生活を送っていたが・・・・・
2009年のウルムチ事件で一変。たまたま平和的な学生デモの現場に遭遇した。
平和デモに警察が発砲。 通信は遮断されて携帯が繋がらず、逮捕者も出た。
(この時初めて、中国共産党への怒りが生まれ信頼感は無くなり絶望に陥った)
その後から中国人は「ウィグル人は野蛮だ。厳しく取り締まれ」と言い始めた。
2014年 鉄道で帰省時、ウルムチ駅に着く直前に警察が入って来て、乗客全員を
チェックしてウィグル人は1つの車両に集まらされる。到着駅では身分チェック
もされた後に解放された。警察に抗議したが丸め込まれ、大変な屈辱感を覚えた。
2015年 中国で悪しき国と教えられた日本に旅行し、人や警察官の優しさを知る。
そして、礼儀正しい人々、自然の美しさ等にも魅せられて、留学を決意する。
同時に、『人権侵害と差別の経験』を世界に知らせる使命 も感じていた。
2016年 ウィグルでの全てを捨て(家族や妻と決別して)来日し、徳島大学大学院
で政治の勉強を始めて、書いた修士論文をベースとなったのが、この著書となる。
中国に戻れば拘束され、家族とも連絡できなくなる事を覚悟しながらの来日だ。
尚、2021年には、修士の学位を取得している。
※ウィグル人が住む「新疆ウィグル自治区」は、東トルキスタンと呼ばれ、紀元前
から遊牧系の民族で、度々独立国を持ち、固有の言語を持ち、文化を育んできた。
この著書は、冷静に抑えた筆致で、違和感のない綺麗な日本語で書かれている。
そしてところどころに、中国政府や習近平氏の方針も見え隠れしている。
まさに、今の私が知りたいのは、そこだ。
運が悪ければ、日本も中国に併合される虞もあるから、私の興味は尽きない。
日本が擦り寄る米国の力は急速に弱まり、日本には中国スパイが蔓延り放題らしい。
今後は、他の著者の本も幾つか読んで、謎の国を少しでも知りたい と思っている。
隠ぺいも多く、一筋縄では行かなさそうな、侮れない国 と思っている。
特にAIを駆使したデジタル情報網の発達が、気味が悪いほど、進歩しているようだ。