ブランドは顧客の心の中にある | 「売れる仕組みづくり」を伝えるコンサルタントのブログ

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[要旨]

ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんによれば、ブランドとは、商品についているシンボルやマークを指すのではなく、顧客の心の中で優れていると認識されている状態をいいます。したがって、ブランドを確立するためには、商品の良さが認識されていない状態、すなわち、ブランドゼロの状態から、商品が優れていると認識される状態、すなわち、ブランドプラスの状態になることを目指さなければなりません。


[本文]

今回も、ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんのご著書、「愛され続ける会社から学ぶ応援ブランディング」を読んで、私が気づいたことについてご説明したいと思います。前回は、渡部さんは、、顧客からの応援による購入はイミ(意味)消費、すなわち、商品を購入することによって生まれる社会的な価値を重視する消費と言い換えることができるということについて説明しました。

これに続いて、渡部さんは、ブランドの定義について述べておられます。「ブランドと呼ばれるための最低要件は、『お客様から見て識別されているもの』です。(中略)識別とは、種類や性質などを見分けること、簡単に言うと、対象のブランドを見て、『ああ、これは○○○ね!』というように、ブランド名を知っている状態を表します。例えば、ここに『エイドデザインティー』というお茶があったとします。

もし、仮に、あなたがこのお茶のことを識別できるのであれば、『エイドデザインティー』はあなたにとってブランドということです。でも、ここで、次のような疑問が湧いてこないでしょうか?『ブランドって、品質の高さや有名無名というのも関係してくるんじゃないの?』その通りです。実は、ブランドには、『状態』というものがあります。恐らく、あなたが、『エイドデザインティー』を見たのは、いまが初めてだと思います。このお茶に初めて触れたいまの状態がが、『ブランドゼロ』、まだブランドにはなっていない状態です。

そこから試しに、この『エイドデザインティー』を飲んでみたとします。味がすごくおいしかっただけでなく、飲み続けると、なぜか自社のブランディングがうまくいくようになっていきました。それを周りの経営者仲間に話したことで、『エイドデザインティー』を飲んだ人たちのブランディングがうまくいくようになると、評判はうなぎのぼりになり、たちまち有名なブランドになりました。こような状態になることを『ブランドプラス』と言います。そうなれば(中略)、『待ってでも欲しい』、『少々高くても買いたい』、お店であれば、『もう一度行きたい』となりますよね」(78ページ)

渡部さんは、ブランドの要件として、「お客様から見て識別されているもの」を挙げておられますが、ブランドの研究者で、「ブランド・マインドセットーブランド戦略の原則とその実践法」の著者であるデューン・ナップは、同署の中でブランドについて、「顧客や生活者に認識された情緒的・機能的ベネフィットがもたらす印象の蓄積が、『こころの眼』の中でとんがった位置づけを占めること」と定義しています。このナップの定義を言い換えると、ブランドとは「顧客が、ある製品を優位なものとして記憶する手段」と言えると、私は考えています。そして、これは、表現の仕方は異なるものの、根底にあるものは、渡部さんもナップも同じだと思います。

ブランドというと、それを表すシンボルやマークなどを思い浮かべる人が多いと思いますが、シンボルやマークそのものには価値はありません。顧客が、そのシンボルやマークのついている商品が、他の商品と比較して優れていると認識することで、ブランドに価値があると認識されるわけです。すなわち、「ブランドは顧客の心の中にある」のであり、そのためには、シンボルやマークはひとつの要素に過ぎません。本当のブランド確立は、差別化された商品の開発と、それを顧客に認識してもらうための活動であるということです。


2024/7/3 No.2758