[要旨]
サイゼリヤの元社長の、堀埜一成さんによれば、スタッフ型の人間はスペシャリストとして非常に優秀な人もいますが、そういう人をマネージャーにすると、部下を使いこなすことができず、本人も部下たちも疲弊してしまうことがあるから、店長は、店に来たお客さまと店で働く従業員をいかにもてなすかを考える役割である、「オスピターレ」に、地区長は、地区の店舗の稼働計画を完璧にする役割である、「ソシエッタ」に再定義したということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、サイゼリヤの元社長の堀埜一成さんのご著書、「サイゼリヤ元社長が教える年間客数2億人の経営術」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、堀埜さんによれば、製造業の工場では何か問題が発生した場合、問題の根っこの部分まで掘り下げて技術的に解決するという姿勢が身についていますが、飲食店では、一つひとつの規模が小さく、問題があっても技術で解決しようとはなりにくいので、製造業のノウハウをサービス業にあてはめることで、生産性の向上に寄与できるということについて説明しました。
これに続いて、堀埜さんは、サイゼリヤでは、マネージャー職を廃止して、フラットな組織にしたということについて述べておられます。「スタッフ型の人間は職人タイプで、中には、スペシャリストとして非常に優秀な人もいますが、そういう人をマネージャーにすると、部下を使いこなすことができず、本人も部下たちも疲弊してしまう。ところが、日本の組織はどういうわけか、そういう職人タイプのものすごくデキる人を『長』にしたがるのです。マネージャーができてやっと一人前、と思っている人が多いからです。
その弊害がわかっていたので、私は一度、『長』という役職をなくすことにしました。店長を廃止して『オスピターレ』に、地区長を廃止して『ソシエッタ』に統一したのです。『オスピターレ』はイタリア語で『接客係』の意味で、店に来たお客さまと店で働く従業員をいかにもてなすかを考える役。『ソシエッタ』は誰がいつ出勤するか、地区の店舗の稼働計画を完璧にする役というふうに、役割を再定義したのです。そこまで徹底したのは、役職に『長』がつくと、人に命令することが仕事だと勘違いする人がいるからです。
本来、自分の役目なのに、下に命じてやらせるだけで『仕事をした』と思い込んでいる人はどの組織にもいますが、それはやったらあかんことです。部下との給料の差を説明できなくなるからです。だからこそ、1回、全部フラットにして、役職名も変えたのです。『長』と呼ばれるのは本部長ただ1人。1,000店に1人だけという体制です。スタッフ型のスペシャリストには、新たに『マエストロ』という役職を用意しました。専門的な内容について指導できますが、部下はいません。そうすることによって、スタッフ型の人のキャリアにも道筋をつけました」
私も、堀埜さんと同様に、「日本の組織はどういうわけか、そういう職人タイプのものすごくデキる人を『長』にしたがる」ことは問題だと感じてました。かつては、デキる人を「長」にしても、仕事の経験の短い人に仕事を教えることができれば、大部分の役割を果たすことができたので、あまり問題にならなかったのかもしれません。でも、現在は、うまく組織的な活動ができているかどうかが、事業の競争力に大きく影響するので、単に、デキる人というだけで「長」にすることは避けなければならなくなっていると、私は考えています。
そして、堀埜さんは、「『オスピターレ』はで、店に来たお客さまと店で働く従業員をいかにもてなすかを考える役、『ソシエッタ』は誰がいつ出勤するか、地区の店舗の稼働計画を完璧にする役というふうに、役割を再定義」したと述べておられます。これは、単に、店長や地区長の呼称を変更したということだけでなく、それぞれの役割を明確にしたというところが大きなポイントだと思います。
従来の店長や地区長は、それぞれの配下の組織の代表、リーダー、管理者などという役割を担うことは分かりますが、それでは会社側は具体的にどのような役割を求めているのかということについては曖昧になっている場合が多かったと思います。さらに、サイゼリヤでは、役割を再定義したことによって、オスピターレとソシエッタは、他の従業員と上下関係にあるのではなく、フラットであるということも明確にしました。
このことによって、「マネージャーにすると、部下を使いこなすことができず、本人も部下たちも疲弊してしまう」ということを避けることができるだけでなく、オスピターレでない従業員も、自分は指示を受ける立場ではないので、自立的に動かなければならないということ考え、行動することができるようになったのではないかと思います。とはいえ、他の会社では、サイゼリヤと同じように、オスピターレとソシエッタをあてはめることはできないと思いますが、各役割を再定義してみることは、従業員の方たちに自立的に活動してもらうようになるためのきっかけになるのではないかと、私は考えています。
2024/12/6 No.2914
サイゼリヤの元社長の、堀埜一成さんによれば、スタッフ型の人間はスペシャリストとして非常に優秀な人もいますが、そういう人をマネージャーにすると、部下を使いこなすことができず、本人も部下たちも疲弊してしまうことがあるから、店長は、店に来たお客さまと店で働く従業員をいかにもてなすかを考える役割である、「オスピターレ」に、地区長は、地区の店舗の稼働計画を完璧にする役割である、「ソシエッタ」に再定義したということです。
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今回も、前回に引き続き、サイゼリヤの元社長の堀埜一成さんのご著書、「サイゼリヤ元社長が教える年間客数2億人の経営術」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、堀埜さんによれば、製造業の工場では何か問題が発生した場合、問題の根っこの部分まで掘り下げて技術的に解決するという姿勢が身についていますが、飲食店では、一つひとつの規模が小さく、問題があっても技術で解決しようとはなりにくいので、製造業のノウハウをサービス業にあてはめることで、生産性の向上に寄与できるということについて説明しました。
これに続いて、堀埜さんは、サイゼリヤでは、マネージャー職を廃止して、フラットな組織にしたということについて述べておられます。「スタッフ型の人間は職人タイプで、中には、スペシャリストとして非常に優秀な人もいますが、そういう人をマネージャーにすると、部下を使いこなすことができず、本人も部下たちも疲弊してしまう。ところが、日本の組織はどういうわけか、そういう職人タイプのものすごくデキる人を『長』にしたがるのです。マネージャーができてやっと一人前、と思っている人が多いからです。
その弊害がわかっていたので、私は一度、『長』という役職をなくすことにしました。店長を廃止して『オスピターレ』に、地区長を廃止して『ソシエッタ』に統一したのです。『オスピターレ』はイタリア語で『接客係』の意味で、店に来たお客さまと店で働く従業員をいかにもてなすかを考える役。『ソシエッタ』は誰がいつ出勤するか、地区の店舗の稼働計画を完璧にする役というふうに、役割を再定義したのです。そこまで徹底したのは、役職に『長』がつくと、人に命令することが仕事だと勘違いする人がいるからです。
本来、自分の役目なのに、下に命じてやらせるだけで『仕事をした』と思い込んでいる人はどの組織にもいますが、それはやったらあかんことです。部下との給料の差を説明できなくなるからです。だからこそ、1回、全部フラットにして、役職名も変えたのです。『長』と呼ばれるのは本部長ただ1人。1,000店に1人だけという体制です。スタッフ型のスペシャリストには、新たに『マエストロ』という役職を用意しました。専門的な内容について指導できますが、部下はいません。そうすることによって、スタッフ型の人のキャリアにも道筋をつけました」
私も、堀埜さんと同様に、「日本の組織はどういうわけか、そういう職人タイプのものすごくデキる人を『長』にしたがる」ことは問題だと感じてました。かつては、デキる人を「長」にしても、仕事の経験の短い人に仕事を教えることができれば、大部分の役割を果たすことができたので、あまり問題にならなかったのかもしれません。でも、現在は、うまく組織的な活動ができているかどうかが、事業の競争力に大きく影響するので、単に、デキる人というだけで「長」にすることは避けなければならなくなっていると、私は考えています。
そして、堀埜さんは、「『オスピターレ』はで、店に来たお客さまと店で働く従業員をいかにもてなすかを考える役、『ソシエッタ』は誰がいつ出勤するか、地区の店舗の稼働計画を完璧にする役というふうに、役割を再定義」したと述べておられます。これは、単に、店長や地区長の呼称を変更したということだけでなく、それぞれの役割を明確にしたというところが大きなポイントだと思います。
従来の店長や地区長は、それぞれの配下の組織の代表、リーダー、管理者などという役割を担うことは分かりますが、それでは会社側は具体的にどのような役割を求めているのかということについては曖昧になっている場合が多かったと思います。さらに、サイゼリヤでは、役割を再定義したことによって、オスピターレとソシエッタは、他の従業員と上下関係にあるのではなく、フラットであるということも明確にしました。
このことによって、「マネージャーにすると、部下を使いこなすことができず、本人も部下たちも疲弊してしまう」ということを避けることができるだけでなく、オスピターレでない従業員も、自分は指示を受ける立場ではないので、自立的に動かなければならないということ考え、行動することができるようになったのではないかと思います。とはいえ、他の会社では、サイゼリヤと同じように、オスピターレとソシエッタをあてはめることはできないと思いますが、各役割を再定義してみることは、従業員の方たちに自立的に活動してもらうようになるためのきっかけになるのではないかと、私は考えています。
2024/12/6 No.2914