PLは1年間のお金の出入りを示すもの | 「売れる仕組みづくり」を伝えるコンサルタントのブログ

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[要旨]

貸借対照表が決算時点のストックを示すものであるのに対し、損益計算書は、1年間のお金の出入りをまとめたもの、すなわち、フローを示すものです。そして、1年間で得た収益である売上高から、仕入額である売上原価を差し引いたものが、売上総利益であり、会社が1年間で生み出した付加価値を示しています。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、会社の貸借対照表の金額が大きい項目を見ると、その会社がどんな資産に多くの資金をつぎこみ、多くの運用益を得ようとしているのかという、経営姿勢を把握することができる、つまり、調達で得た「単なるお金」を資産に変えることで「収益を生むお金」になるということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、損益計算書の構造について述べておられます。「BSとPLの違いを、私は、よく、『ストック』と『フロー』で説明する。ストックとは、『特定の時点の話』だ。決算書のBSも、『決算時』という『特定の時点』の『負債、純資産、資産』の状態を示しているから、ストックの話である。もちろん、負債や資産は、過去からの蓄積だが、『決算という特定の時点で、それらはどうなっているのか』をまとめたもの、ということだ。

対するフローとは、『ある期間の話』だ。PLは『1年間』のお金の出入りをまとめたものだから、PLはフローを示すもの、ということになる。この違いがわかれば、PLはBSよりずっと理解しやすいかもしれない。費目は細かく分かれているが、それはあまり気にしなくていい。1年間で、どれだけの収益があり、そこからそれだけの費用が差し引かれ、結果、どれだけの利益が上がったかを示すのが、PLだ。では、実際のPLとは、どんなものか。(中略)

まず、『売上高』は1年間で得た収益だ。そこから、仕入れを指す『売上原価』を引いたものが『売上総利益』だ。この『売上総利益』から、『販売費及び一般管理費』を引いたものが『営業利益』だ。具体的には、水道光熱費や、従業員への給料、機材のリース代、オフィスの消耗品費、接待交際費などが、この『販売費及び一般管理費』に含まれる。『営業利益』とは、つまり、『収益から、仕入れ費用と、営業にかかる必要経費を引いた額』=『その企業が事業によって得た利益』ということだ。

次の『営業外収益』は、主に利息・配当の収益、『営業外費用』は、主に白くの支払いを指す。これらの差し引き金額を、先ほどの『営業利益』に合計した額が、『経常利益』となる。さらに『特別利益』『特別損失』というのもある。例えば、持っていた不動産を売って得た利益は『特別利益』だ。『特別損失』は、持っている不動産の価値が下がり、そこから得られる収益が損なわれた、といった場合に計上される。

これらの差し引き金額を『経常利益』に合計すると、『税金等調整前当期純利益』となり、そこから法人税などの税金を引いた額が『当期純利益』だ。1年間の売上高から、さまざまな費用や、その他収益、支払い、さらには税金を、足したり引いたりした結果、『私たちの企業は、この1年間で、これだけの利益を得ましたよ』ということである。こうして、PL上ではじき出された利益は、1年間の取引の『結果』といえる。言い換えれば、決算時という『特定の時点』の金額だから、最終的にはBSの『純資産』の一部に乗っけられる」(89ページ)

PLについては高橋さんのご説明の通りですので、少しだけ補足します。細かいことですが、会社の会計期間は、ほとんどの会社が1年ですが、厳密には、1年以内です。法務省令の「会社計算規則」の第59条第2項には、「各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、(中略)、1年を超えることができない」とあり、論理的には1年以内とすることが可能です。

例えば、6か月、3か月、11か月などとすることも可能ですが、決算手続きの頻度を最小限とする1年とすることが最も効率的といった理由で、ほとんどの会社は1年としているようです。次に、売上原価は、1年間の仕入額の合計額ではなく、売上原価=期首商品棚卸高+期中仕入額-期末商品棚卸高という計算式で求めます。このような計算をする理由についての説明は割愛しますが、売上原価と期中仕入額は近い金額ではあるものの、必ずしも一致しないということに注意が必要です。

その次に、売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた額は、事業活動で生み出された価値、すなわち、付加価値と言えます。(売上総利益は、厳密には付加価値とは同額ではありませんが、ほぼ等しい額と考えることができます)次に、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益は、本来の事業活動そのもので得られた利益と言えます。営業利益に、受取利息等の収益である営業外収益を加え、支払利息等の費用である営業外費用を差し引いた経常利益は、通常の事業活動で得られた利益を示しています。

特別利益と特別損失では、高橋さんのご説明にもあるように、不動産を売却して得られた利益、または、発生した損失ですが、この他に、投資目的で保有していた株式の売却益、他社への貸付金の回収不能額、災害や盗難で発生した損失額なども、特別利益、特別損失となります。すなわち、通常の事業活動以外で発生した利益と損失ということです。このように、損益計算書は、上から下に行くほど、事業の中心から周辺に向かって収支を示すものとなっています。


2024/6/14 No.2739