前触れもなく背中を預けてきたハヤテに、シンは怪訝そうな視線を向けた。

 

「おい…」

 

明らかに迷惑そうなシンを無視して、ハヤテが言う。

 

「なあ、俺ら、あの山超えるんだよな?」

 

「……それがどうした?」

 

シリウス号が停泊しているのは、二人が居る場所から、ちょうど島の反対側である。

 

シンとハヤテが宝を探しに入った洞窟は、お決まりのパターンで宝を手に入れた途端に崩落した。

 

崩落を逃れて地上に出てみれば、完全に仲間が待つ場所の反対側。

 

全速力で走って流石に息があがった二人は、しばし休んで呼吸を整えていたのだが…。

 

「あの山、めちゃくちゃ高いぞ。上の方、雲に隠れてて見えねーじゃん。他の道探した方が良くねえ?」

 

ハヤテの言葉に、シンがため息をついた。

 

「相変わらずバカだな。サルは何でも登りたがる…」

 

「は? 別に俺はあのくらいの山を越えることなんか何でもねーけど。シンにはキツくねぇ?」

 

「……山の向こう側へ行くのが目的だ」

 

「だから、山の向こうへ行くってことは、あの山を越えなきゃなんねーだろ? 洞窟は無くなっちまったんだからさ」

 

シンは憐れむようにハヤテを見る。

 

「なら、ハヤテはこのまま真っ直ぐ行ってあの山を越えろ。お前がサルよろしくあの山をよじ登っている間に、俺は、草原を歩いて船に戻る。その方が確実に速いからな」

 

「…え?」

 

ハヤテがシンの言葉を理解する前に、シンはすっと立ち上がった。

 

その背に寄りかかっていたハヤテが、支えを失ってバランスを崩しかけ、慌てて体を起こす。

「……? どういうことだ?」

 

ハヤテは前方の山をよく眺めてみた。

 

絶壁のようにそびえていて、とてつもなく高い山である。雲に隠れて頂上が見えない。

 

そして、シンが進んでいく海辺の草原。

 

そういえば、この島に来た時、船で島の周りを一周したのだ。

 

確か槍のように突き出た山の周囲を草原が取り囲んでいたのが、見張り台から見えたような気がする。

 

シンのように島を一周しただけで島のおおよその地形を覚えたりはできないが…。

 

「ま、待てよ、シンっ」

 

ハヤテは急いでシンを追うのだった。