宴はそろそろ終盤に向かっていた。

一度は大量の酒に酔って甲板で寝入ってしまったハヤテが、ふと目を覚ました。

自分を見下ろしているシンと目が合う。

「……なんだよ」

その様子が、しばらく前から見下ろされていたような気がして、ハヤテは不機嫌そうにシンを睨み返した。

もしかしたら、自分が目覚めた原因は、シンに蹴られたか、蹴られそうな殺気を浴びたか…。

たぶん、そのあたりのような気がする。

といっても、どこも痛くはないから、蹴られたのではなさそうだ。

「ふん…起きなくてもいいものを…」

シンは、唇を笑みの形にして残念そうに呟いた。

「は? てめぇが、起こしたんだろ」

「名前を呼んでみただけだ。まさか起きるとはな…」

ため息混じりにシンはポケットから包みを取り出して、まだ寝転がっていたハヤテの胸の上に無造作に放った。

「…? ??なんだ、コレ…」

ハヤテはシンの意図が判らず、自分の上に落ちてきた包みを手に取って眺める。

「今日は、お前の誕生日だったはずだが?」

そんなことも忘れたのかと、呆れた口調でハヤテを見下ろしたシンは、そのまま船室へと歩み去っていく。

「……」

身体を起こしてシンからもらった包みを開けると、赤黒茶色に光る、拳より少し大きめの硬い塊。

「何だコレ????」

「……最高級牛の乾燥肉だな。ナイフで薄く削いでそのまま食べられるはずだ」

宴で使った食器を重ねて腕に乗せ、厨房へ片付けている様子のナギが立ち止まる。

「…そうか、シンが落札したのか……」

「は?」

「市場の競りで、最高値がついていた。…大切に食えよ」

笑みを浮かべて告げると、ナギもまた歩み去っていく。

「……。ったく。シンの野郎、礼を言う暇もねぇし…」

ハヤテは、シンが消えた船室の方を見て、苦笑した。