リュウガに用があって船長室を訪れると、どういうわけか彼女がリュウガと一緒に居た。
…君は、船長と二人きりで、何をしていたのかな?
笑顔で尋ねようとしたけれど、どういうわけか、笑みが創れない。
確か、私には、厨房で特別の料理を作るから、と言って部屋を出て行ったはずなのに。
ここは厨房でないし、君が料理をしている形跡もない。
そんなことを思って何も言えずにいる間に、君はそそくさと私の横をすり抜けて逃げていく。
まるで、悪戯を咎められたような表情で…。
言葉を失くして彼女を見送った私に、リュウガは笑いかけた。
「おい、ソウシ。そんなに怒るなって」
「……? 怒っていないよ?」
私は怒っている? この感情は、怒り、だったろうか?
「浮気されて怒る亭主ってのは、今のお前みたいな顔しているけどな?」
「……」
今、私の胸の内で蠢いている釈然としない気持ち。
いつの間にか、自分ではどうしようもないくらい、彼女に対する独占欲が育ってしまったみたいだ。
可愛くて、とても愛おしい、私の部屋の同居人。
自覚すると同時に、自嘲のため息が漏れた。
「彼女には、できるだけ笑顔で接していたいのに…。どういうわけか、うまくいかないね…」
「そりゃ、生きてる証拠だな」
リュウガが事も無げに言う。
「生きている証拠…」
偉そうに腕を組んだリュウガは、私を見て微笑した。
「ああ。…この船に女を乗せた意義があったな」
「そうだね…」
彼女をシリウスの一員に加えたことについては、リュウガに感謝せざるを得ない。
毎日が、こんなに彩りに満ちたものになったのだから。
「まあ、相手がソウシなら、下手に隠すよりは伝えといた方が早ぇ…アイツはな、今夜の宴を昼からはじめられねぇかと、頼みに来たんだよ」
「今夜の宴?」
あれ? 今夜、宴をする予定なんて、あっただろうか?
「おいおい、今日はお前の誕生日だろうが」
呆れたようにリュウガに告げられて、私は、自分の誕生日のことなんてすっかり忘れていたことに気づく。
「…昼から?」
宴はいつも、夜になってから行う。
いまだかつて、昼から宴を始めた覚えがない。
「夜は、特別のプレゼントでも用意してんじゃねーか?」
からかうようなリュウガの言葉が意図するものは、当然、私も容易に思いつくけれど…。
あんなに恥ずかしがり屋の彼女が、ある意味、誰の目にもバレバレなことをするだろうか?
もしかして、彼女の言っていた「特別な料理」というものは、昼食にふさわしいものなのだろうか?
…それとも、本当に、今夜、期待してしまってもいいのかな?
あの、悪戯を咎められたような表情は、何だったのだろう?
あっという間に、私の思考は彼女のこと一色に染まってしまう。
「ま、夜を楽しみにしているんだな」
リュウガの言葉に、私の期待は、勝手に高まる。
彼女が、私のために何かしようと頑張ってくれていることは、どうやら間違いないようで。
それがどんなことでも、私のためにしてくれるなら、私を想ってしてくれるなら、嬉しくて。
自然と笑みが私の口許を支配する。彼女がくれた微笑み。
期待外れでも構わない。
君が大好きだよ、と今夜も君にたくさん伝えよう。
