「これ、懐かしい…」

整理していた荷物の隙間から彼女が取り出したのは、かつてのオレの愛用品。

「…捨てろと言ったはずだが?」

「はい。これ以外は、捨ててしまいました」

柔らかな笑みを浮かべて、かつてのオレの愛用品を愛おしそうに手に包み込む彼女を見下ろし、ため息をつく。

愛着が無かったわけではない。

ただ、自分が彼女との、この生き方を選んだ以上は、捨てるべきだと思った。あの時は。

全て捨てた筈だ。彼女が捨てまいとしたものも、全部、取り上げて捨てたと思っていた。

つまり、彼女はオレの目を盗んで、あれを残したわけだ。

久しぶりに目にする愛用品へ何気なく手を伸ばすと、パシっと彼女に手を振り払われた。

「おいっ…、お前…」

「だめです。これは、私の大切な思い出なのっ。渡しませんっ」

オレを見上げて睨んでくる彼女は、吹き出しそうになるくらい可愛い。

「……大切な思い出、か」

彼女は、オレに渡したら捨てられるとでも思っているのだろう。実際、あの時はそうだった。しかし、今は…。

「一応、ソレはオレの物だったと思うんだが?」

「だって、シンさんはいらないって、全部捨てちゃったじゃないですか。これは、私が必死で助け出した、大切なモノです。もう、シンさんのものじゃないんだから」

必死に、かつてのオレの愛用品を守ろうとする彼女。

「分かった。もういい。大切にしまっとけ」

彼女は、オレから隠すように、荷物にしまい込む。

それで、いい。

あの時、オレは海賊を辞める決断をし、その象徴として、眼帯を手放した。


「じゃあ、行ってきます」

「ああ」

そしてオレは、彼女の外出中に、扉を探す過去の彼女と出会うのだった。