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心理コンサルタントの白瀧です。
さて、梶井基次郎の短編小説に『檸檬』という作品があります。
これは、彼の代表作であるというだけではなく、日本文学の傑作とも言われています。
ただ、文学作品は、いかにその作品の描き出す世界に共感できるかどうか、ということが重要あり、共感できなければ、たとえどんな傑作と評価される作品も、その人にとっては単なる凡作に過ぎません。
その辺りに、文学作品の評価の難しさがあるのだろうと思います。
『檸檬』の主人公の男は、得体のしれない不吉な塊に心を押さえつけられます。
それは、焦燥感のようでもあり、嫌悪感のようでもある。
それは、酒の飲み過ぎによる肺尖カタルや神経衰弱のせいでもなければ、また借金のせいでもない。
すべては、その不吉な塊がいけないのです。
そのお蔭で、以前彼を喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一節も辛抱できなくなります。
また、彼を惹きつけた風景やさまさまなものも、今は意味のないものになってしまいました。
そんなとき、彼は、以前から好きだった果物屋へと足を運びます。
そこで、その店には珍しい檸檬を見つけます。
そして、彼は、その檸檬を一つだけ買い求めます。
彼は、もともと檸檬が好きであり、その色彩と丈の詰まった紡錘形の格好も、手に持った時の冷たさ、その何とも言えない匂い、すべてが彼を癒してくれます。
そして、彼は、幸福感に満たされます。
もちろん、それは、檸檬そのものの効果ではありません。
檸檬そのものが、彼の心を癒し幸福にしたのではありません。
檸檬を手に持ち、その匂いを嗅ぎ、その冷たさを実感しても、彼のように心癒される体験をする人は少ないかもしれません。
彼を幸福にしたのは、他ならぬ彼の意味づけです。
すべては、檸檬に対する彼の意味づけに他なりません。
それゆえ、得体のしれない不吉な塊も、結局は、今の自分の現状に対する彼の意味づけに他ならないのです。
だからこそ、たった一個の檸檬が、彼の得体のしれない不吉な塊も吹き飛ばしてくれたのです。
つまりは、幸福それさえも、私たちの現状に対する意味づけに他ならないのです。
【参考文献】
檸檬 (角川文庫)
432円
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