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心理コンサルタントの白瀧です。
もしあなたが、今すぐ1万円もらえる場合と、1カ月後に1万円もらえる場合とでは、どちらをうれしいと感じるでしょう?
もちろん、今すぐもらえる1万円だと思います。
1カ月後にもらえる1万円も確かにうれしいかもしれませんが、今の段階では、それほどピンとこないのではないでしょうか。
このように、ある報酬に対する期待が、時間とともに下がっていく状態のことを『時間割引率』と言います。
そして、時間とともに報酬に対する期待が大きく下がることを『時間割引率が大きい』と言い、あまり下がらないことを『時間割引率が小さい』と言います。
たとえば、欲しい品物があって、それを買いに行ったところ、運悪く売り切れていた。
店員によれば、その品物が入荷するには1カ月ほどかかるとのこと。
この場合、「それでも欲しい」と思えば、時間割引率が小さいことを意味し、「それなら要らない」と思えば、時間割引率が大きいことを意味します。
そして、時間割引率が小さい人は、自らの購入意欲をうまくコントロールできている状態であり、時間割引率が大きい人は、衝動的だということになります。
これに対して、今すぐ1万円払わなければいけない場合と、1カ月後に1万円払わなければいけない場合とではどちらを嫌だと感じるでしょう?
もちろん、今すぐ1万円払わなければいけない場合の方が嫌だと思うのですが、それでも、報酬の場合と違って損失の場合は、たとえ1カ月後であっても、嫌だと思う気持ちはそれほど下がることはないのではないでしょうか。
このように、一般的に人は、報酬よりも損失の方が時間割引率が小さい、つまり損失の場合は、たとえ時間が経っても嫌だと思う気持ちはそれほど変わらないものなのです。
これは、損失に対しては、脳の中の『島(とう)皮質』と言われる部位が関与しているからです。
島皮質とは、人が痛みを感じるときに活動する脳部位であり、これは、身体的な痛みに対しても、また精神的な痛みに対しても同じように活動します。
損失が、人にとって大きな痛みを伴うのは、この島皮質が活動しているからに他なりません。
それゆえ、損失に対して、人は、時間に関係なく、嫌だと思う気持ちがそれほど変わらないのです。
この島皮質の活動が、人を借金やギャンブルを繰り返させることから救ってくれているのです。
言い換えれば、借金やギャンブルを繰り返している人は、この島皮質があまり活動していないのです。
これは、脳画像を使った実験でも明かにされています。
彼らは、島皮質があまり活動しないために、損失に対してそれほど痛みを感じないのです。
つまり、報酬に対しても損失に対しても、時間割引率が同じなのです。
中には、損失に対する時間割引率の方が、報酬よりも大きい人もいるのです。
それゆえ、彼らは、借金やギャンブルを繰り返してしまうのです。
また、島皮質は、自分の痛みに対してだけではなく、他人の痛みに対しても同じように活動します。
たとえば、誰かが指を切ったのを見て、思わず「イタッ!」と思うのは、この島皮質が活動しているからです。
あるいは、友人から失恋した話を聞いて、自分も胸に痛みを感じるのは、この島皮質が活動しているからです。
私たちが他人に共感できるのは、言わば、この島皮質の活動があるからなのです。
実際、他人への共感能力に乏しい人は、他人が苦痛を感じる姿を見ても、この島皮質が活動しないことがわかっています。
もし私たちが痛みを感じることができなければ、自分の体を守ることもできず、自分の財産を守ることもできません。
また、痛みを感じることができなければ、他人に共感することもできず、社会の中で生きていくことさえ困難になってしまいます。
痛みは、人にとってとても嫌なことです。
しかし、私たちは、痛みを感じることができることを、本当は喜ぶべきなのかもしれません。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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