記憶は当てにならない | 人生を変える『気づきの思考法』~アドラー心理学に学ぶ人生を成功に導く方法~

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心理コンサルタントの白瀧です。

 

さて、最近の記憶に関する研究では、

 

子どもの頃の記憶は当てにならない

 

というのが、専らの見解です。

 

このことに関しては、かつて、アメリカのある州で、子どもへの性的虐待を理由に、次々と親が逮捕されるという事件がありました。

 

虐待を思い出せない子どもに対しては催眠療法が施され、その結果、親の性的虐待が明るみに出るということもありました。

 

しかし、その後の調査で、子どもが思い出したとされる性的虐待のほとんどが、先入観を持った警察官らの誘導による偽りの記憶であることが明らかとなり、また、催眠療法で思い出した記憶でさえも、先入観を持ったセラピストの暗示による偽りの記憶であったことが判明しました。

 

そもそも人の記憶は、ビデオのように、すべての体験の細部を鮮明に保存しておくものではありません。

 

場合によっては、自分が関わった経験の中核部分でさえ、誤って記憶されるときもあります。

 

シティ大学ロンドンのマーク・L・ハウ氏によれば、記憶の意義は、細部を正確に思い出すためではなく、体験から有用な意味を引き出す点にあるからなのです。

 

そして、そのように記憶を活用できる人こそ、自ら築いた世界観を通じて現況を見極め、未来を思い描くことができる、というわけです。

 

つまり、人は、記憶を思い出すたびに、現状の自分に合うように記憶の内容を書き換え、自らの世界観を強化しているわけなのです。

 

たとえば、ある人からいつもひどいことをされて憎んでいたとして、ひょっとすると、その記憶は後から強化されたものであり、実際は、そのような経験は、それほど頻繁ではなかったのかもしれません。

 

これは、私の小さい頃に放送されていた『巨人の星』というアニメの記憶で明らかにされたことがあります。

 

それは、多くの人が、主人公星飛雄馬の父である一徹が、毎回、怒ってちゃぶ台をひっくり返していた、と記憶していたのですが、実際に父親がちゃぶ台をひっくり返したのは、初回の一度だけで、それ以後は、そのようなシーンすらなかった、というものでした。

 

多くの人が、一徹に対するイメージに合うように記憶を書き換えていたのです。

 

先のハウ氏の説明によれば、人間の記憶とは、過去を振り返るためのものではなく、未来を思い描き、それに対処するためのもの。

 

だとすれば、過去の記憶にこだわって前に進めない人は、記憶そのものをうまく活用できていない、ということになるのかもしれません。

 

記憶を扱う上で重要なことは、何を覚えているかではなく、なぜそれを覚えている必要があるか、ということを知ることなのです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

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