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心理コンサルタントの白瀧です。
さて、今から十数年前のこと。
知り合いの女性から幽霊退治を頼まれたことがあります。
幽霊退治、と言っても、何も除霊をしてくれということではなく(まあ、頼まれてもそれはできないですが)、ただ毎日起こる怪奇現象を調べて欲しいということでした。
女性の話によると、その怪奇現象とは、扇風機が何も操作していないのに突然動き出す、ということでした。
ときには、首まで回りだすらしい。
それが毎日起こるので、怖くて仕方ない、と言う。
どうやら、その霊は、イタズラ好きなようです。
ゴーストバスターは、私の専門ではないし、一人暮らしの女性の部屋に入るのもどうかと思ったので、一旦は断りましたが(本音は、少々怖かったからですが)、そのときは友人を呼ぶから、と彼女が言うので、そこまで頼りにされたのならやるしかあるまい、と思って引き受けることにしました(まあ、怖いと言えなかったからです)。
彼女のマンションに着くと、部屋の中はきれいに片付けられていて、件の扇風機が、部屋の隅に静かに鎮座していました。
見たところ何の変哲もない扇風機です。
しばらくの間、扇風機を横目にちらちら見ながら、彼女と私、そして彼女の友人の女性と3人で話をしていましたが、扇風機は、一向に動く気配を見せません。
「人が多いので、今日は出てこないかな」
と彼女は安心したように話すと、テレビを点けました。
そうして、何気なくテレビを見ていた次の瞬間、ついに扇風機が突然動き出したのです。
女性と友人は、
「キャッ」
と悲鳴を上げると、恐怖に引きつった顔をして抱き合っています。
仕方がないので、私は、恐る恐る扇風機に近づき、『入/切』と書かれたスイッチを押しました。
すると、扇風機は止まりました。
次に扇風機をつけ、『弱』『中』『強』と書かれたスイッチを順番に押していきましたが、扇風機は問題なく動きました。
原因がわからないので、もうしばらく様子を見ようということになり、気分を変えるために再びテレビを見始めたそのとき、扇風機がまた動き出しました。
「何かがおかしい」、
そう思ったと同時に、その扇風機にはリモコンが付いていることを思い出し、
「なるほど、そうか」
と気がつきました。
原因は、テレビのリモコン。
扇風機が、テレビのリモコンに反応しているに違いない。
そう思って、テレビのリモコンを扇風機の方に向け、いろいろと押してみると、案の定、扇風機が動き出し、首まで回りだしました。
怪奇現象も、原因がわかれば笑い話になります。
それは、ものごとも同じことです。
人は、危険を察知すると、不安や恐怖という感情を呼び起こし、その場から自らを逃げ出させるようにします。
そのため、不安や恐怖という感情は、ものごとの本質を人の目から奪ってしまいます。
そうして、ものごとから逃げれば逃げるほど、不安や恐怖はどんどん大きくなっていきます。
そうなると、もはやそのものごとに対処することができなくなってしまいます。
しかし、実際、ものごとの本質をわかってしまえば、それは、恐れるに足りないものであることが多いものです。
勇気を出して、恐怖に立ち向かえば、答えは案外簡単に見つかるかもしれません。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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