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心理コンサルタントの白瀧です。
さて、かなり以前になるのですが、ある絵本が、子育てをする親の間でブームになったことがあります。
その絵本とは、地獄を描いたもので、それを紹介する記事には次のように掲載されていました。
『わが子が”よい子”に豹変する絵本「地獄」のすごすぎる中身』
大人でさえはらわたをえぐられるような凄惨シーン満載の『絵本 地獄』(風濤社刊)が、いま大ブームになっている。東村アキコさんが6歳になる一人息子の子育てライフを描いたマンガ『ママはテンパリスト』(集英社刊)第4巻に、この絵本を読み聞かせる場面が登場。一気に注目を集めることとなった。
ページをめくると血の色を象徴する赤が鮮烈に使われた、色調豊かな地獄ワールドが広がる。
(中略)
「効果はてきめん。その日から息子がよい子に豹変しました。悪いことをしたら地獄に落とされると口で言うより、ビジュアルでイメージを植え付けたほうが効果的なんでしょう。それからは『えんま様はどこからでも見ている』と感じたのか、親の前だけではなく私がいないところでも『悪いことはできない』と思ってるみたいです」と東村さん。
(中略)
「もともと先代社長によるもので、かつて自殺が急増した時期に『いのちをそまつにしたら地獄だ!』という緊急メッセージを込めた作品です。『子どもが悪夢でうなされたりしたら』と躊躇する親御さんの声もありましたが、2~3日なら悪夢もいいかと。
(中略)
トラウマが子どもの心に倫理観を育てることもあるんですよ」(風涛社の高橋社長)
この記事を読んで、正直なところ、私は非常に残念に思いました。
この子どもは、決して『よい子』に豹変したのではありません。
この子どもは、ただ単に『怖いものから逃げる子ども』に豹変しただけなのです。
『悪いことをしたら地獄に落とされる』という脅しによる教えは、もし仮にその子どもにとって地獄よりも恐ろしいものが現れて、『そこに行きたくなければ悪いことをしろ』と脅されたとしたら、その教えにも従うということを意味していることになります。
また、その子どもが
『地獄なんて存在しない』
というように考えるようになってしまえば何の効果もなくなります。
恐怖によって人の倫理観は、決して育ちません。
恐怖から逃れるために正しい行いをしているのならば、それは同時に、恐怖から逃れるために正しくない行いをするということにも結び付くからです。
このような教え方をしたのでは、もし子どもが恐怖から逃れるために正しくない行いをした場合には、どのようにそのことを説明すればいいのでしょうか。
人の倫理観は、恐怖などからは生まれません。
増してや、トラウマによる倫理観など長続きはしません。
人の倫理観は、『勇気』からこそ生まれるのです。
人が正しい行いをするためには、とても勇気が必要になります。
たとえば、周囲のみんなが反対する中で、ただ一人だけ正しい行いをしようとするならば、そこにはとてもつもない勇気が必要です。
それは、恐怖からは決して生まれない行動です。
恐怖から逃れるためなら、行動するよりも沈黙することを選んでしまうでしょう。
それゆえ、このような教え方をして、子どもの勇気を奪ってはいけないと私は強く思うのです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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