食物アレルギーの原因は食物だけではない? | キッズクリニック ブログ

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小児科学、特に小児心臓病学を専門に大学教授としての経験を積んだ後、名誉教授になってから、自分の教え子の小児科診療所で子どもを診ています。
こどものことを中心にいろいろ書いていこうと思っていますので、よろしければお付き合いください。

前回、食物アレルギーの予防のために離乳食を遅らせるのは意味がない、とお話ししましたが、食物アレルギーのお話しには続きがあります。食物アレルギーですから、母乳栄養の赤ちゃんにアレルギーを起こすのは、口から入る食べ物が原因だろうと考えるのが普通の考えですね。それで、授乳中のお母様の食べたものの影響を考えたわけです。

しかし、ピーナッツアレルギーの研究を通して、もう一つ分かってきたことがあります。

それは、乳児期にピーナッツオイルを含んだスキンケア用品を使うと、ピーナッツアレルギーが6倍以上になることが分かったことです。これを「皮膚感作」と呼びます。皮膚を通じてアレルギー抗体ができてしまうことですね。

とくに湿疹などで皮膚の状態が悪いと、感作されやすい、つまりアレルギーになりやすいことがわかりました。これは、大変な発見でした。皮膚からのピーナッツの刺激で、食べ物のピーナッツアレルギーになることなど、誰も想像していませんでしたからね。家庭でピーナッツをよく食べると、その粉が飛散して皮膚感作を起こすことも考えられます。ピーナッツだけではなく、他の食べ物でもあり得ますね。

もちろん子どもさんの肌が健康なら問題ありませんので、ご心配はいりません。

2012年に「茶のしずく」と言う石鹸による小麦アレルギーが問題になったことを覚えていらっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。お化粧石鹸である「茶のしずく」には加水分解コムギ(小麦粉成分)が入っていて、これで顔を洗ったりしていると粘膜から皮膚感作が起こってしまい、今までなかった小麦アレルギーになってしまったと言う事件です。悪くなった方の半数くらいには、アナフィラキシーと言う全身症状が出たと報道されていましたので大変なことですね。これは、内科の先生の間では大きな驚きを持って迎えられたニュースでしたが、ピーナッツアレルギーの皮膚感作をすでに知っている小児科医にとっては、「そういうこともありえるね」という感じ方だったことを覚えています。幸にして「茶のしずく」の使用をやめたところ、症状は徐々に改善した方が多かったとのことです。

大切なことは、食物アレルギーでは「食べ物」だけを考えていてはいけないことです。赤ちゃんの皮膚を正常にしておくことが、食物アレルギーの予防になることを忘れずに、皮膚ケアに注意することが大切です。

上に述べた素晴らしい研究も英国のLack先生によるものです。表皮バリアをつかさどるフィラグリン遺伝子の変異がアレルギー発症のリスクになると言う大切なことも報告されていますが、お話が難しくなるので、ここでは述べませんでした。

お子様の肌はきれいにしておくことが大切ですね。

キッズクリニック 院長 柳川 幸重