「命の回数券」と呼ばれる、テロメアがヒトの体の細胞にはあって

 

細胞分裂を繰り返すたびに、それは短くなっていき、

 

やがてそれが尽きたときに寿命を迎えるという

 

あたしの細胞にはきっと、この他にも「性愛の回数券」なるものがあるのだろう

 

「命の回数券」テロメアが細胞分裂50-60回したのちに尽きるよーに

 

あたしの細胞に密かに刻み込まれた、「性愛の回数券」も

 

同じ男と逢瀬を10回、期間にして大体ひと月、繰り返したのちに尽きるみたい

 

相手がどーんなに体の相性が良くて

 

文句のつけよーのない男であろーとも、それは容赦なく突然訪れる

 

振り返って見れば、2人のセックスが絶頂期を迎えた直後に

 

待ったなしで訪れるみたい

 

その残酷な事実を、昨夜、あたしは待ち焦がれた筈だった

 

逢瀬の最中にいやおうなしに突き付けられた

 

それまであたしは、あたしに秋風吹かせる相手の実力不足が悪いのであって

 

飽きたなら、単純に相手の男を挿げ替えれば済む話だと思い込んでた

 

だって、そーして挿げ替えるごとに、

 

あたしは男を確実にアップグレードして、

 

あたしにとってますます好いたらしー男を引き寄せて来たから

 

だけど!!

 

好色で浮気者である、あたしのDNAまでは書き換え出来ぬらしい

 

今ここで手放したら、後々、あたしは後悔と未練とで悶え苦しむと分かっていても

 

今のところ、あたし史上、最高に体の相性が良い男なのだから

 

この男でずーっと満足していたら、あたしだって何かと都合がいい筈なのに

 

それなのに!!

 

「性愛の回数券」を既に使い切ってしまったあたしの細胞は

 

「裸で横たわる、この男はもーいらん、追放せよ!」と騒いでる

 

確かに、「性愛の回数券」が目減りしていく兆候はちょーっとずつあった

 

あたしのそんな変化が、体の相性がいいがゆえに、相手の男にも移るのだろうか

 

それとも、彼にだって誰にだって、細胞の中に「性愛の回数券」はあるのだろうか

 

出会って最初の頃は、あたしをうーっとりと黙らせてしまう程に

 

むつまやかで、呼吸もぴーったりと合い、言葉なくても愛し合えていたのに

 

いつしかキミはぼんやりとどこか冷めた感じの間延びした愛撫をして

 

それが物足りないあたしは、気が付けば、次々とキミに愛撫の指示してる

 

そんでもって、キミのシラけが伝染したのか、あたしも集中出来ずに

 

こーんなことを考えながら上の空で抱かれてる

 

「一旦、飽きてしまえばそれまでのこと

 

セックス以外にセフレに対してなーんの思い入れもない

 

このセフレにこだわる理由もない

 

そろそろ次の新しい相手でも見繕おうか

 

アイツにするか誰にしようか…」

 

うふふ、キミだって、あたしに誰か別の女のことを重ねていたかもね

 

ささやかな2人の起爆剤として

 

キミはあたしに指摘されるまで自覚はなかったみたいだけど

 

昨夜珍しく中折れしてしまった

 

キミのPが雄弁に全てを物語ってくれている

 

つまり、2人の情事の終わり、2人の関係の死を迎えつつあるって

 

あたしはもううろたえやしていないよ

 

だって、こーんなことは初めてじゃない

 

だから、あ、またやって来たんかって静かに思う

 

そ、2人のセックスが絶頂期を迎えた直後に

 

待ったなしで訪れる、秋風ってヤツは

 

満たされたら欠けていく、まるで夜空の軽薄な月みたい

 

ねぇ、あたしたちはこの間、急いで頻繁に会い過ぎたみたい

 

だって、大抵のセフレたちは月1か月2の逢瀬がいいところだと言うじゃない

 

それなのに!!

 

あたしが求めるまま、最初は週1、最近では3日に1度会おうとさえしてた

 

もう1度言うけど、あたしの「性愛の回数券」はたった10回分しかないの

 

それなら、既にあたしは回数券をかなり使い込んでる筈

 

いいえ、既にもう使い切っているのかも知れない

 

キミがあたしにもたらした愛撫の余韻もむなしく

 

あたしは隣で横たわるキミのことなどそっちのけで

 

もやもやとこみあげるこの思いを、

 

心が珍しく揺れてる、おぉ、これは一体何なのだろうと

 

つい物書きの目でわくわくと観察しながら

 

ひたすら、ぐーるぐると、今まさに書いているこれの構想を練ってた

 

悪いけど、キミのことなど、今はもうどーだっていい

 

キミとのセックスだって、もうどーだっていい

 

あたしは一刻も早く帰って、執筆したい

 

本当は今夜も日付超えるまで、気が済むまでキミと愛し合おうと思っていたけど

 

気が変わって、キミを打ち捨てるかのよーにして、ホテルを後にしたのよ


帰途に就く、キミの車に揺られながら、あたしの中では

 

平家物語の祇園精舎の冒頭が何度も何度もリフレインしていたの

 

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり

 

沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす

 

おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし

 

たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ…」

 

あれは今から満ちる月なのか、欠けていく月なのか

 

空梅雨の湿気に霞んで見える車窓越しの夜空の月は

 

もやもやとして汚らしくて、見る者を不安にイライラとさせる

 

後味の悪い、2人の今しがた終えたばかりのセックスみたい

 

だけど!!

 

あたしはもううろたえやしていないよ

 

だって、こーんなことは初めてじゃない

 

だから、あ、またやって来たんかって静かに思う

 

そ、2人のセックスが絶頂期を迎えた直後に

 

待ったなしで訪れる、秋風ってヤツは

 

満たされたら欠けていく、まるで夜空の軽薄な月みたい

 

一旦、飽きてしまえばそれまでのこと

 

セックス以外にセフレに対してなーんの思い入れもない

 

このセフレにこだわる理由もない

 

だから何とかしよーと策を講じてでも

 

マンネリを回避したい、つなぎ留めたいとも思わない

 

一旦、飽きてしまったなら、

 

どんなにお気に入りで体の相性が良いセフレでも

 

相手をすげ替えてしまえばいいだけのこと

 

互いに恨みっこなし

 

それがすなわち、非情なセフレの掟なのだから…

 

 

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