夫が救急搬送された急性期病院は大体において

 

最長2週間程度しか入院治療をしてくれない

 

その前に、夫が運び込まれた救命病棟だっていつまでも

 

夫をそこに置いておくわけにはいかない

 

そーは言いながらも、今ではすーっかり曖昧になってしまった、

 

あたしたち夫婦の記憶やその当時に残したメモなどを辿っていくと、

 

それでも、この急性期病院には約3週間近く、

 

そのうち救命病棟には1週間ぐらいいたと思う

 

それだけ、当時の夫の状態が深刻だったということか

 

依然として芳しい数値回復とまでは至らずにいたものの、

 

何せこのよーに、許される治療期間の縛りが大いに幅を利かせていたものだから

 

夫の意識が一貫してちゃーんとあるということをいいことに、

 

夫は救命病棟を追い出されるよーな形で一般病棟へと移されたの

 

辛うじて水分の経口摂取は許されたものの、

 

当然、その頃だって、尿道カテーテルやおむつをつけたままで

 

夫は依然としてベッドに縛り付けられ、絶対安静のままだったわ

 

しかも、大部屋と俗に呼ばれる、一般病室には空きがないとのことで

 

その分、こちら側の金銭的負担は増えるけど、

 

個室の病室なら空いているのでそこならどーかと移されたの

 

むしろ、あたしとしてもそちらの方が都合良かったわね

 

なぜなら、未だに予断を許さぬ、夫との夫婦水入らずの、

 

ひょっとしたら、これが最後になるかも知れない、時間が作れたわけだから

 

時間感覚を失った夫の記憶によると、3日間ぐらい水を飲むことも禁止され

 

その状態でずーっと乾燥した救命病棟で拘束されて寝かされていたものだから

 

唇がガサガサに乾燥して大きく切れては派手に出血して

 

それがいくつも無残にかさぶたになっていたわね

 

当時、梅雨の真っ只中だったにもかかわらず、

 

あたしは薬用リップクリームを夫から所望されて差し入れたのだっけ

 

一般病棟に移ってもしばらくは、さすがに水分摂取は許されたものの、

 

絶食を余儀なくされていたものだから、

 

点滴による栄養補給で夫の顔は常に青白くむくんでいたのを覚えてる

 

驚異&脅威の鈍感力の持ち主である夫は常に鷹揚としていて

 

一度たりとも声を荒げたりとか、取り乱したりするところを見たことがない

 

何があろーとも、そ、こーんな瀕死の状態においても、

 

精神状態は、良くも悪くも、絶対安定の低空飛行の男だったわね

 

おまけに、その前年に脳梗塞を発症してからというもの

 

これは認知度テストでは決して測られることの出来ないものだと思うけど

 

常にそばで見ているあたしの感覚からして、

 

夫はいくらか確実に子供帰りをしていると思う

 

人によっては、それを軽度の認知症だと呼ぶのかも知れないけど

 

いいえ、だからと言って、甘えん坊になったとか、

 

利かん坊になったとかいうのではなくて

 

人を疑うということを知らぬ、素直で大人しい坊やに戻ったよーな感じなのよ

 

尤も、元々、そーいう性質は彼にもあったのだけど、

 

それがより顕著になったというのか

 

だから、夫は周囲の看護師らから愛されてる、可愛がられている印象さえ受けたわ

 

片や、脳の機能障害などで、性格が一変し、

 

攻撃的になってしまう人がいることを考えると

 

あたしはより穏やかで可愛らしい性格へと変貌した夫に

 

愛しさと感謝の気持ちをますます覚えずにはいられなかったわね

 

あたしのみならず、そーんな夫と24時間接する看護師らは、

 

「こんなに穏やかで苦しそうな様子も見せることなく、

 

見ているだけなら、すこぶる元気そうにみえるのに

 

ホントに今尚深刻な数値の悪さのままなのかしらん?」って

 

皆、訝しがっていたぐらい

 

一方、主治医も主治医で、ありとあらゆる思いつく限りの治療を施しては

 

なかなか改善しない、夫の数値の悪さに頭を抱えて悲鳴を上げていたみたい

 

そーやって、夫の入院生活にも慣れた頃、あたしも緊張の糸が切れたのか

 

ふとした瞬間に、おんおんと泣いたりすることがあったりしたの

 

あたしの心服するメンター、通称・教祖様に泣きながら電話をしたり

 

ケアマネージャーをしながら、それに関した会社も経営している、

 

学生時代からの友人のさえにも電話したりした

 

ちなみに職業柄上、これまでに数多(あまた)の人々の最期に立ち会ってきた

 

彼女からは、今から葬儀屋と弁護士にだけは

 

連絡をしておけとアドバイスされたわね

 

そ、あたしは今では夫の唯一の身内である、義弟から

 

いわゆるいかがわしー「後妻業の女」として敵対視されていたものだから、笑

 

当時、あたしの元・2代目第2愛人にして東京愛人でもあったマコトにも

 

何度か電話したりしたこともあったっけ

 

自分の父親も永らく入院していて最期を看取ったという彼に

 

「キデは、これまでに誰か親しい人の最期を看取ったという経験はないの?」

 

と訊かれたことがあって、それがとーっても印象深かったことを今でも覚えているわ

 

確かに、あたしにはそーいう経験がまーったくなかったものだから

 

それゆえに、ひょっとしたら、夫の最期を看取ることになるのかも知れないと思うと

 

幾晩も独りでぶるぶると震えながら過ごしたこともあったわ

 

それから、当時、あたしにおける、唯一例外的に生活圏の愛人だった、

 

ヒロシにも電話をしたわ

 

ヒロシはあたしの職場の外部役員の1人であったりもするの

 

あたしたち夫婦は職場不倫の末、極秘で入籍したものだから

 

その事実を明かしているのは、このヒロシ1人だけだったのだけど

 

それを踏まえて彼からは、こー言われてしまったわ

 

「お前の旦那さん、その調子だとまだまだ入院が長引きそうな感じだから

 

もう観念して、理事長とか会長にお前たちが夫婦であることを打ち明けて

 

旦那さんの開けている仕事の穴を一緒になってフォローして貰わないと

 

ますますお前は自分で自分の首を絞めることになってしまうぞ」

 

ええ、すこぶる、おっしゃるとーり!

 

あたしもまさしく同じことを考えていただけに、

 

ヒロシにそーやってアドバイスされたことで背中を押されたよーな気がして

 

それから直ぐに、職場の一部の役員にはあたしたち夫婦のことや

 

夫の現状のことも包み隠さずに報告したの

 

夫の入院の最中に、夫が主催していた総会が開催されることになっていたのだけど

 

夫の代わりにあたしが急遽主催者代表として、

 

今では隠された事情を知った役員らと会議に会議を重ねて、大いに彼らに甘えながら

 

どーにかこーにか無事開催にまでこぎ着けることが出来たの

 

おまけに、総会会場施設の担当者と来たら、

 

総会当日、利用者であるあたしよりも遅れて鷹揚に出勤してくるものだから

 

ま、当然、そーいう態度、心掛けだから、その担当者の凡ミスが続出して

 

そのたびにあたしはヒィーって、悲鳴を上げて振り回されることになるのだけど

 

うふふ、おかげさまで、アクシデントに臨機応変に対応するとは何かを

 

しーっかりとこの担当者様から身を持って学ばせて頂いたし

 

おかげさまで、その夜の晩酌の缶ビールは、死ぬほど旨かったから

 

まさに、「終わり良ければ総て良し」であたしも消化してしまったけどね、笑

 

尤も、残念ながら、担当者の彼女は

 

優良大口クライアントである、あたしを失って、次回はないけどね

 

それから、あたしは夫が緊急入院してからというもの

 

ぐちゃぐちゃにこんがらがった自分の気持ちを

 

解(ほど)いて内観したいという、強烈な欲望があって

 

当時、ブログで連載記事「夫への手紙」を第3話まで書いて公開していたのね

 

だけど!!

 

書いている傍から、涙がどんどんと溢れて、

 

とてもじゃないけど冷静にこのまま書き進められる状態じゃない!

 

そりゃ、そーよね、あたしはまだこの嵐の真っ只中にいて

 

読者のみんなに、あたしの現況を伝えらえる程には消化出来ていなかったのだから

 

だから!!

 

あたしはそこで潔く、書くことを断念すると

 

それを直ぐにブログでもお知らせしたわけ

 

その記事を読んだ、西のセフレ筆頭ケースケ師匠を始めとした

 

当時のセフレ数名から次々と

 

「大変な状況にあるんだね、旦那さんも、キデさんも大丈夫?」

 

心配のメールを頂いて、あたしはブロガー冥利、

 

まさにセフレ冥利に尽きると感謝していたわ

 

尤も、当時のあたしは性欲どころか、食欲さえも

 

ほとんど忘れてしまっていた状態だったけど

 

だから、夫が入院中は一切、この性欲の強いあたしが

 

セフレの誰とも寝たいとは思わなかったし、

 

実際、誰とも一切寝ていなかったわね

 

ホント、由々しき事態だったわけよ!

 

だけど!!

 

そんな大勢の人たちの温かい励ましに支えられながらも、

 

遅々として一向に改善の兆しが見られない夫の病状に、

 

治療のみならず、病院経営の採算についても意識しなければならない

 

そーんな板挟みの重圧についに耐えきれなくなったのか

 

それまで辛抱強く治療を続けてくれていた主治医から

 

突然、こー言われてしまったの

 

「病状に改善の兆しはまだ見られませんが、

 

恐らくこのまま固定されてしまうことでしょう

 

当病院としては、急性期病院である以上、

 

これ以上、ご主人をこのまま入院治療することは出来ません

 

そこで、転院先をご自分で探して下さい!」

 

またしても、あたしは絶望のどん底に突き落とされることになるのよ…

 

 

to be continued...

 

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へ

 

 

人気ブログランキング
人気ブログランキング