函館ちゃんちゃんこ物語19「ラッキーピエロな後輩たち」 | 海峡kid.の函館ちゃんちゃんこ物語

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 函館ちゃんちゃんこ物語19

 

「函館ちゃんちゃんこ物語」
毎年届く年賀状。その中には学生時代の懐かしい仲間のものもある。

ここ数年多くなったのが、「退職」の知らせだ。いつの間にかみんな年を取った。

道場海峡男(どうばうみお)は、

ふと、大学の研究室の機関誌「学大地理」を本棚の隅から取り出した。

色あせた機関誌だが、一瞬のうちに学生時代の記憶が蘇り、心がときめいた。

 

 

 

「ラッキーピエロな後輩たち」

 

根拠地だった「雀荘さとう下宿」から出て道場海峡男、山高焚人、深間克明の3人は2年生となった。間本久直は3年生となったが、まだ「雀荘さとう下宿」残留である。
道路をはさんで、大学のすぐ向かいに引っ越しした海峡男。朝に目覚めてカーテンを開けると、見えるのは大学の正面玄関。ふと、目線を上げると、地理研究室の大きな窓が見える。
自然に学習意欲が沸いてくる、学生には絶好の環境である。

 

その地理研究室には、4月に新しく8名の1年生が入学してきて、海峡男もいよいよ先輩となった。しかし、この新1年生たちはちょっと、ちょっと、ちょっと過ぎる連中で、とても従順でおとなしく、上品な2年生とは違い、派手で目立ちたがり、賑やかで元気なやつが多かった。

 

筆頭は3人。筆頭が3人というのもおかしな話であるが、八岐大蛇(やまたのおろち)というか三岐大蛇(みまたのおろち)状態でたいへんである。

3人の共通点は関西出身!・・・関西パワーは他を圧倒する力がある。阪神タイガースを見ればそのパワーは分かる。根っからの阪神ファンである海峡男にはその気持ちは十分に分かる。

 

 

でも、新1年生の筆頭の3人はちょっと異常だった。これは関西出身というのはおそらく理由にはならない。偶然そんな素質を持った3人が遭遇し、たまたま3人とも関西出身で意気投合したというだけであろう。

 

個性的なのはいいが、先輩を先輩とも思わない礼儀知らずの生意気な態度、関西弁でまくし立てる会話で、函館らしい落ち着いた地理研究室の雰囲気は、がらりと変わった。

 

植木研二(うえきけんじ)、もと長距離ランナーということであるが、詳細は不明である。ジュリー(沢田研二)の歌が天才的にうまく、顔は似ても似つかないが、歌と振り付けだけで勝負できる芸人である。

次に、ミュージシャンの並々 正(なみなみただし)。「お母さんごめん」「パチンコの歌」など、当時大ヒットした持ち歌がある。(※注1)

 ※注1 どこで大ヒットしたのかは不明である

そして、3人のリーダー格の中城秀樹(なかじょうひでき)は、他の1年生より二つ年を食っている。名前のごとく西城秀樹に雰囲気が似ていて、また世良公則とも共通点がある。彼もまた歌が異常にうまく、迫力のある人生を送っていた。

 

 

しかし、4月当初は勢いのあったこの3人だったが、5月の連休が終わる頃には、ミュージシャン並々は、パチンコとギャンブルに溺れ、歌手中城は、夜の街の人間になったという噂で、研究室にはほとんど顔を見せなくなった。

ただひとり残った芸人植木研二は、海峡男たち2年生の地道な指導のおかげで、まっとうな道を歩み始め、いたって礼儀正しく真面目な学生に生まれ変わった。

 

彼らの没落以後は、常識があり先輩をたてられる他の新1年生たちが台頭してきた。

 

くりくり目玉の梨名仁(なしなじん)、剣道命の大田勇(おおたいさむ)、スリムでおとなしい鳴田優(なるたすぐる)、そして紅二点、南国育ちふう(道産子です)で南沙織似のロングヘアー、中崎厚子(なかざきあつこ)、お料理が上手でいつも弁当を作ってくれる、P・レディーのミーちゃん似の宮野慧子(みやのけいこ)。

この5人が、正統派の学生として地理研の平穏を守っていった。

 

 

当時は、なんといっても、ピンクレディーの全盛期でもあった。紅二点、中崎と宮野は二人でいることが多く、函館のピンクレディーを言われ、二人で学内を歩いていると、他の研究室の男子学生たちが、地理研究室までいつもぞろぞろ後を付いて来ていた。その金魚の糞的な男子学生たちを追い払い、安全に地理研究室に彼女たちを迎えるのが、剣道命の大田勇の役目であった。

 


 

続きます


※おことわり
この物語は、実際にあったかどうか疑わしいことを、作者の老化してぼんやりした記憶をもとに書かれていますので、事実とは全く異なります。登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージです。