6 第2章 北街市立第二中学校(2)「もう、学校に行かない」 | 海峡kid.の函館ちゃんちゃんこ物語

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 プロバンスのパン屋さんで 6

 

この物語は、
友人の心ない言葉と、無責任な大人の行動で人間不信になり、
不登校になった夢見る中学3年生と、
憧れの定年退職後の楽しい時間のはずが、
1本の電話により、はかなく崩れ去った元小学校教師の、
偶然出会いから始まる、激動の半年を綴ったお話である。

 

第2章 北街市立第二中学校(2)

「もう、学校に行かない」

 

次の日、竹下唯(たけしたゆい)が学校の玄関に入ると、

同級生の西野真弓が待っていた。


唯の顔を見ると、
「どうして、唯が若宮杯に出られるのよ」
と言ってきた。
西野真弓は、小学校からの親しい仲で、
バレーボール部に入ることを勧めたのも真弓だ。
唯は、
「えっ?私は分からない。先生に言われて・・・」
と言いかけると、真弓が、
「吉住は、唯をひいきしている」
と、教師の名前まで出して、今まで見たことがない顔をして攻撃してきた。


驚いた唯は、
「えっ?えっ?どうして?」
訳が分からなかった。



それ以来、あれほど唯と仲のよかった西野真弓は、口を利かなくなった。

唯はショックだった。自分では親友だと思っていた真弓が、
あんな怖い顔をして攻撃してくるなんて。

教室に行くと、真弓は他の生徒と、何事もなかったように
楽しそうに話をしている。
ときどき、真弓の鋭い視線が唯に突き刺さる。

次の日の昼休み、職員室に呼ばれた。

唯に、バレーボール部の担当教師の吉住が、
「竹下、昨日、若宮杯の出場メンバーに選んだけど、考え直して、

 竹下は出さないことになった」
と言ってきた。唯は、
「どうしてですか?」
と聞いたが、
「いろいろ考え直した結果、そうなった」
「まっ、竹下はまだ1年生だから、これからいっぱい大会があるよ」
吉住はそういってニコリとしたが、正直言って、人ごとのような言い方だ。

唯にとっては、当然、釈然としないものがあったが、

「はい、分かりました」

そう言って職員室を出た。

 

ちょっと離れたところに、真弓が数人のバレーボール部員と一緒にいた。

唯は、「真弓たちが、何か先生に言ったんだ」と思った。

 

「私が何をしたというの・・・」



その日は、部活には行く気にはなれなかった。
担当教師の吉住に、体調が悪いということで部活は欠席すると伝え、家に帰った。

母親にも、若宮杯に出られなくなったことは言えなかった。
あんなに喜んでくれたのに・・・。

食欲もないし、夜も眠られなかった。

それでも、少しは寝たのだろう。
次の日の朝、唯は目が覚めた。

昨日のことは夢だった・・・と思いたかった。

しかし、西野真弓のあの恐ろしい顔が目に浮かんできた。
あんなに仲のよかった真弓が、あんな顔で、あんなことを言うなんて・・・。

やっぱり夢じゃなかったんだ・・・

唯は起きられなかった。

母親が、
「唯、起きなさい。もう時間だよ・・・」
と言いにきたが、唯は起きられなかった。

部活はもちろん、学校に行くことさえ怖かった。
玄関に行くと、また西野真弓がいる。
教室に行ってもにらまれる。

部活の担当教師の吉住は、他人事のようににニヤニヤしている。
もう学校なんて行かない。。。

 

続きます



この作品は創作された物語です。
登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージです。

 

※おことわり

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