閑話休題 ジェンダーバイアス | 婦人科備忘録

婦人科備忘録

ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

先日、「宅の息子自慢」を

激情に駆られて上梓したところ

各方面から

ご心配&ご意見&応援&反論・・・などなど

多数寄せられた。

だいたいにおいて

「まあまあ。あなたもおとなげないわよ」

的なご意見だったと思う。

ぐうの音も出ない。

お騒がせいたしました。

 

冷静に分析するために

ここで二つ、興味深いお題を上げてみる。

 

 

① とある外科医(出典:あるごめとりー)

 

都市伝説を多く扱っている

Youtubeチャンネル・あるごめとりー

いつかUFOを見たいと思っている気持ちに突き動かされ

ほんとにときどーき拝見しているのだが

主催者の方がおもしろいエピソードを紹介していた。

 

**********

ある父子が深夜、ドライブをしていた。

 

だが不運にも車は大きな自損事故を起こしてしまい

父子は近くの大きな救急センターに運ばれた。

瀕死の重傷を負った幼子を見た瞬間

待機していた外科医が悲痛な叫び声を上げた。

 

ああ!この子は

自分の息子です!

**********

 

さてお次。

 

**********

② ピラティスインストラクター

 

腰痛を持病にしていたある同僚が、

ご母堂に勧められて

近くのジムでピラティスを始めた。

インストラクターが彼女に言うには

「骨盤をまっすぐ立てましょう。

恥骨からレーザービームが出ていると想像して

そのビームを常にまっすぐ保ちましょう。」

 

レッスンの間中、

「ほら、恥骨からビーム♥」と言われ続けたらしい。

**********

 

皆さんは①、②のエピソードで

どんなシーンを想像しただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

①の話を聞いた直後、私と私のオットは

「・・・ん?お父さんが二人いる?

 つまりお母さんが再婚?不倫??」

と同時に思い浮かべた。

 

いや違う。正解は

 

外科医=母、だったのである。

 

 

②、これはみんなで大爆笑したんだけど

この恥骨からビームのピラティス指導者

 

はげちゃびんの

熟年おじさん

 

なんだとよ。

私やその場にいた同僚たちはこぞって

このピラティスインストラクターを

終始、「美人のお姉さん」として話を聞いていた。

最初から性別を言わないあたり、憎い演出であった。

 

 

正解された方は何人いるだろうか。

 

 

そう、これがジェンダーバイアスの

恐ろしいところである。

 

この社会に生れ落ちてから以降、

無意識に繰り返し刷り込まれ

その考え方が正しく間違っていない

と感じてしまう、この恐怖。

混じりけもなく純粋な善意から

醜悪な悪意が生まれるホラー。

 

 

先日の「息子自慢」コメントにも書かれてあったが

女医と男医が離婚し

その理由が

「男医が国境なき医師団に参加したいから」で

「女医が家事をちゃんとしないから」

当然だ、とされていた。

男医がのちに再婚したナイチンゲールを大絶賛

こちらとはうまくいっている

(と、ご本人は思っている)とのこと。

おそらく新しい嫁は万事をそつなくこなすのであろうし

きっと国境なきところへも

夫とともに赴くタイプの方だろうとも。

 

男医と女医

二人とも立派に成人しており、しかも同業者

家事をどちらがやろうが同じ条件であると思うが

 

冷蔵庫にぱんぱんのレトルトや

雑然としているリビング

山と積まれている洗濯モノはすべて

女医である妻の責任だと思われ

驚くことに

男医がだらしがない

とはならない。

ついでに言うなら国境なき医師団に

参加したがっているのが

男医である場合、「崇高な志」と思われるのに対し

女医である場合、

「まあっ!!ご主人を置いていくのかしら」となり

家庭があるのにそれを放棄する、

非常識な女に成り下がる。

 

ピラティスインストラクターの場合もしかり。

 

ピラティスなぞ洒落たことをする人は

女性で、しかもきっときっと

スレンダーな美人。

間違っても1ミリも禿げてないし、

胸毛も指毛も生えてない。

 

どや。

 

ジェンダーバイアスの呪いから

あなたは自由であっただろうか。

 

 

私がかーっと激情に駆られた理由は

私がこれまでこの根強いジェンダーの壁と闘い

それから決して自由になれることがない、と絶望し

それでもまだなお、諦めることなく

これからの世代に一縷の望みを賭けているから、である。

 

 

息子ラブのマダムたちよ

あなたが

命に代えても守りたい

あなた方の息子へのラブと同様

あなたの息子の嫁にも

命に代えても娘を守りたい、

誰かのラブがあることを忘れるな。

そして公の場で何かを発言する場合

自分の正しさが大きな偏見に操られていないか

周囲をとくと見渡していただきたいものである。

 

 

 

 

ちなみに大学時代のかつての友人(女性)は

国境なき医師団に参加し、流れてきた銃弾に倒れた。

ずっと未婚であった。

卒業してから一度も会っていないが

一途で一本気な彼女のことだから

夢も希望もキャリアもある自分のパートナーを

自分の夢のために戦場に連れて行くのは忍びない、

と思ったに違いない。合掌。