婦人科便り287 主治医についていくべきですか? | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ありがとうございます。

 

医者はわりと異動が多いですからねー

私も若いころから数えると

10か所くらい変わっている。

いちいち手続きが面倒なので

ぼちぼち落ち着きたいお年頃です。

 

異動ごとに溜まった年休がご破算になるのが

地味にキツイ。

 

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Q.

若いころ左卵巣に胚細胞腫瘍である

卵黄嚢腫 Stage1cで抗がん剤の治療をしました。
以後、同じ病院で

定期的な経過観察をしていたところ

3年ほど前、年1回のCT検査で

右卵巣に未熟奇形腫 Stage1aが見つかり

卵巣卵管子宮を全摘しています。

今は半年毎の血液検査と

年1のCT検査のみ受けています。

最初に病気がわかった時から14年後の再発です。 
 

このたび主治医が今のがんセンターから

県立の三次医療機関に異動となり

一緒に転院するかどうか考えてねと言われています。

2回ともその先生に手術してもらっているので、

ついていこうかと思いましたが

担当医には

今回の再発はこの病院で見てもらって良かったと思う

転院しても雑に見るとかではないけどよく考えてね

と言われました。

どうしたらいいでしょうか。

 

A.

悪性疾患の精密検査、治療は

医者の腕前も大事ではあるが

なによりもかによりも

その病院での検査の精度、

できる治療の範囲がもっと大事。

よってその担当医が諭しているように

今の病院で経過観察をされたほうがいいと思います。

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俺ってグレイト!症候群の医者が

日本全国に棲息しているため

特に産婦人科は担当医の異動に伴い4~6月、

ぞろぞろとマダムが異動する傾向にあるが

実はよい治療はハコ=病院の施設が

左右することも多い。

 

例えば病期により子宮頸部異形成に対して

レーザー蒸散術とい治療があるのは

意識高い系マダムなら

ヤフーでググる(できん)などして

とうの昔に知っているだろうが

受診した病院にレーザーの器械がないと

いくらその治療を希望してもその病院ではでけん。

医者の腕がものすごくよくても

指先からレーザーは絶対出ないので

(そんなやつおらんやろ)

諦めてレーザーを出す器械を

持っている病院に行ってもらいたいところ。

 

特に悪性疾患では、手術のほかに

抗がん剤や放射線治療をすることがあるだろうけれど

その施設にしか許されていない薬

その施設しか持ってない放射線治療の器械

など、病院ごとにできる治療の範囲に違いがある。

 

また、細かいことを言うと

MRIやCTの性能にもそれなりの段階があり

ざっと撮影するお安いものから

めちゃくちゃ細かいところまで

丸わかりの高価なものまであって

何をどう使用しているかは一般の患者さんが

外から眺めているだけではわからない。

 

私も異動前のMRIが名残惜しくてたまらず。

あの画像の質、よかったなーーーーーーー

とか今でも思う。

 

今回の再発はこの病院で見てもらって良かったと思う

転院しても雑に見るとかではないけどよく考えてね

という担当医のお言葉は

いみじくも、この「ハコの優劣」を

暗に示唆するものであり

きっとそのがんセンターでは

ものすごく優秀でお高い器械で

検査ができるのであろうし

そしてその先生も

そのお高い器械で診断の精度が

上がったご経験があられるのであろう。わかる。

 

もちろん、その担当医はおそらく非常に優秀で

かつ誠意ある医者であり

彼・彼女との出会いは貴重だなあとは思いますんで

惜しまれる気持ちはわかります。

ただでさえ俺ってグレイト!症候群の医者が多い中

自分の患者を10年超ぶりの再発から救い、

なおかつ

それをわが手柄だけにせず

「自分の腕前だけではなく、施設の良さもあるよ」

と客観視されている。

きちんと真実を過不足なく

患者に伝えることができておられる、

というのは並大抵の力量ではないのです。

 

だからこそ、ご質問のマダムには

その素晴らしい担当医の意見を容れ、

がんセンターで経過観察を続けます、

何かコトがあれば(ないことを祈りますが)

また相談しに行ってもいいですかとの姿勢でいることを

お勧めする。

 

それが彼・彼女の願いでもあるので。

 

永の別れではないのだもの

狭い日本、

会いに行こうと思えばいつでも会える。

異動先に元気です、

と年賀状でも送ってあげてください。

喜びますよ。

 

お大事に。