閑話休題 こうやって人生は続いていく | 婦人科備忘録

婦人科備忘録

ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

書評にムネアツなお便りありがとうございます。

 

風の便りに

年齢の近い先輩が鬼籍に入ったと

耳にしたばかりでした。

若いころは知人が亡くなっても

自分の身に置き換えて

考えることは少なかったような。

 

化粧のノリが驚くほど悪くなるアラフィフ

だんだん衝撃が大きくなります。

 

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今冬、子宮全摘→術後すこぶる好調な、

この本(東京の台所)に

収録されているワインとタバコおじさんの妻です。
こちらで、この本を

手に取ってくださったのを知って小躍りしました。

事情や葛藤を抱えながら

人前では朗らかに振る舞ってもうすぐ3年、

手術をきっかけにまた

自分の人生を生きよう!と思うようになり、

結果いろんなことが良い方向に転がり始めています。

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「東京の台所 それでも食べて生きていく」

 

実は随分前に一度読み終えたもので

ちょっと気が滅入ったり

人を信じられなくなったり

くそー、殺す!と思ったり(物騒)

そういったネガティブな気持ちになったとき

自分をリセットするために本棚にあります。

ワインとたばこの彼

ひときわ印象の深いエピソードでした。

 

吉本ばななさんの「キッチン」にも

台所が出てきますね。

 

清潔でぴかぴかのそれではなくて

ちょっと床が黒光りしていて

使い込まれたフライパンや

古そうだけどきちんと研がれた包丁

洗って干された布きんなどなど

少し照明も昏くて、出汁の匂いがいつもして

絶対にインスタ映えなんかしないような

そんな台所。好きだー

 

大学院にいた時、私の上司だった指導教官は

料理が得意な男性でした。

ハラスメント気味おぢさんだったけど(ブログ既出)

実のところ非常に優秀な科学者で

最終的には北の方の

大きな大学の教授をされていました。

そんな彼もすでに鬼籍に入っております。

 

彼が当時、こんなことを私に言ったのを

昨日のことのように覚えています。

「実験って、料理にすごく似てるんだよね

 きちんと手順を踏んで

 素材の性質を裏切らなければ

 美しい結果が待っている」

私も思う。

料理は手術によく似ている、と。

 

もちろん現実問題として

良くも悪くもひらりと裏切る結果もまたあるわけで

いつもおいしくいただける料理はないように

いつもうまくいく実験や手術はありません。

それでも、淡々と手順を踏めば

来るべき結果を待って

それを誰かと喜んだり悲しんだりできる。

 

あぶくのように現れ、

いずれ消えるものと分かっていても。

 

とまれ、

二度と手に入ることのない、

足りないパーツを失って

この世界がもとのように決して完璧ではなくても

ひとまず私たちはよく食べ、眠り、

やっぱり生きていかねばなりません。

 

私も自分の台所で、今日、

何か作って食べよう。

うん、そうしよう。

野菜を洗って皮をむき

肉か魚を切って

何かがぐつぐつ煮えるのを待とう。

 

元気でいてくださってありがとうございます。

嬉しかったです。