婦人科便り243 胎盤ポリープ | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ありがとうございます。

 

得意技の一つにしているのが

子宮鏡下手術なんですが

たいていは子宮内膜ポリープとか

粘膜下筋腫のちっこいのとか

地味に取ってます。

やってることはそんなに難しくないのに

症状が劇的に良くなり、効果が実感できるんで

わりと好きな手術、ってか一番好きかも。

入院期間も2泊3日くらいで短い上

痛くないしね~(私調べよ、もちろん)。

 

ただ、けんかっ早くて気の短い私が

結構気を遣って手術をする病気の中に、

 

胎盤ポリープ

 

が、あります。

 

あんま、ネットで調べてもすぐには出てこないんで

ネタが尽きた今、このニッチェなニーズにお応えしておきます。

何も口から失礼を垂れ流してるばかりではなく

ちゃんと仕事もしてますよ~と。心からそう言いたい。

 

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Q. 胎盤ポリープってなんでしょう?

 

A.お産や流産の後(流産手術や中絶後でも)

 胎盤が一部残った部分に血管が入ったり

 かさぶたができたりして育ち

 でかくなったもの、です。

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同じことをしてもされても

運が悪いというか大殺界というか

ひどい目に遭う人とそうでない人がいるんですなー

たまに中絶後にこれになっちゃって

しこたま病院に通う羽目になり、挙句の果てに

子宮鏡手術の途中に大出血で輸血に至る、って人もいて

何がどう幸いし何がどう不幸を招くか

わからんのがこの、胎盤ポリープ、であります。

例えできたとしても

このま~んま、胎盤ポリープが枯れてくれて

何にも治療しなくても次のお子を授かりました!的な

ラッキーが当たる人もいるんで、

この違いってなに?とベテランの領域になってきた今でも思う。

 

この胎盤ポリープ、

たまに妊娠ホルモンである

hCGを出し続けるものがあって

放置してると次のお子が授からん。

そうでなくても突然の大出血に繋がることもあって

いわゆる婦人科で

急変しがちな疾患として恐れられてます。

 

いたよ、いた。

年末のごった返す外来の待合室で一人

股の下に血だまりができたまま昏倒、血圧低下

そのまま大晦日、元旦を病院で迎えた不幸なマダム・・・

思い出すだけでふるえるー

 

大出血する前になんとか子宮鏡手術に持ち込めれば

そんなに怖くはないんで、

お産後や流産後に

なんか止まってた出血が最近増えてきて・・・

とか思う人は病院にかかった方がいい。

なんでも早めに見つかれば、

治療の選択肢が広がるからです。

 

治療法は

① 子宮鏡手術でポリープを取る。

② 子宮摘出する。

③ 子宮動脈塞栓術を受ける。

④ ある種の抗がん剤を尻に打つ

  (メトトレキサート)。

の4つで、子宮を温存希望で、hCGが低くて

次のお子を希望されているマダムは

①が一番いい方法じゃないかと思います。

 

手術の時も、場合によっては出血が多くなるんで

手術が待てそうな状態であれば

先に自己血貯血(自分用に自分の血を献血しておく)

をすると安心ではあります。

 

hCGがまだまだ高い場合は

子宮鏡手術中に大出血!しがちなんで

子宮動脈塞栓術をしてから子宮鏡する、ってのを計画。

低けりゃ子宮鏡手術だけで

十分摘出が可能なことが多いんで

そう案内されるんじゃないかな。

そこらへんは治療法がしっかりとは確立されていないので

主治医とようと相談して決めてもらえたらと思いますです、ハイ。