婦人科便り219 閉経後に生理が再開する? | 婦人科備忘録

婦人科備忘録

ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ありがとうございます。

 

生殖年齢を外れてくると

周囲の扱いがやや雑になってくる傾向がある。

人生50年と信長はうたったところを考えると

箱根駅伝で言えば復路

あとのメインイベントはもはや

葬式だけ

となった今

仕方がないことなのかもしれない。

 

駄菓子菓子

 

人間の尊厳はいつまで?と問われれば

今の人生が終わる瞬間まで

できれば尊厳をもって生きていたいと思うのが

世の常ではなかろうか。

若者よ

更年期以上は自分と関係ないとお思いだろうが

やがて自らも更年期以上になっていくのであるからして

大事に扱わんと

 

祟るよ?けけけ

(ちょっと被害妄想)

 

そんなこんなで本日もマダムからお便り。

 

**************

Q.

生理が止まって2年ほど経っています。

ところが不正出血が1週間以上あり、

慌てて婦人科へ受診しました。

子宮頸部異形成で円錐切除術もした経験もあったので

当然、検査があるだろうと覚悟していましたが
検査らしい検査をすることなく、

生理だと言われました。
年齢的に更年期なので、

1年以上開いても来る人は稀にいると……。
実際1年以上もあいて

生理が来る人はいるのでしょうか?

 

A.

まあ、たまに生理が

思い出したかのように来る人もいます。

・・・が、それはあくまで重い病気を除外した後で

やっぱりちゃんと検査しておいた方がええんやないかと思います。

**************

 

なじみの患者さんが

生理がない、言うてきて

もう閉経ちゃうか、

いつまでも若い思うな!と暴言吐きながら

経腟エコーしたら、妊娠やった

ことあったなー(遠い目)。

そういえばむかむか(つわり)してたわ~笑とマダム。

 

そういえば、やない。

 

残念ながら4人目のお子とはならず

その子はお空に帰ってしまったが

何も無月経=常に閉経、ではない。

プロたるもの、重大事項から鑑別すべきで

検査もせずに

「おひさしブリーフ」言ってはならない(自戒)。

 

確かに毎月飽きもせんといらしていた月の使いが

急に訪れなくなり、寂しくも卒業を祝っていたところに

ナプキンの買い置きもないまま

突撃されても困惑するのみで

すわ、がんか?と慌てふためくのは当然の成り行き。

マダムの心中、お察しします。

 

おひさしブリーフな月経、もしくは不正出血は

たいてい

① 女性ホルモンで柔らかくしたお肉メインの

  やっすい焼肉を食べすぎた

  ミ●プルーン食べた

  など、知らずに、そこにある子宮に

  女性ホルモンを投与しちゃった

② 萎縮性腟炎

③ 誰かにときめいて卵巣が活性化した

などなど、蓋を開けてみたら

笑っちゃうくらいのことではある。

ちなみに①は規制がかかったのか

滅多に見なくはなった。

②は最後の月経から7~8年経つと、

丈夫だった腟がかぴかぴに乾いて切れやすくなるためで

極端なケースでは法事の時なんかに座布団に

とんっ

と座っただけでじゃーーっと出血し

法事に列席した誰もが驚いて

健康でつやつやしたマダムが

救急車で運ばれてきたりしたことがあります。

法事、どうなったかは知らん。

③は過去に一回だけ経験があって

20代で離別、その後30年ぶりに

彼氏ができたとたんに

出血した、というもの。

これは卵巣が意外に乙女だった、という事例。

 

よって、おひさしブリーフな出血が

一概に全部が全部、ビョーキとは言わん。

 

言わんが、それら笑い話は「がん」を

きっちり除外した結果のことであります。

 

嫌なのは

子宮頸がんの中でも

組織型が腺がんに相当するもので、

子宮頸がんに多い組織型の「扁平上皮がん」よりも

診断しづらく、リンパ節に転移しやすく、誤診しやすく

発見しづらく、予後が悪め

というタチの悪いがん。

こちらは疑ってかからないと診断がつかず

経過観察、とされがちなので要注意なんである。

 

特に、過去にHPV陽性だ!とされていたマダムは

さらにリスクが高いため、

「卵巣のときめき・・・♥?」とか思わず

検査をしてもらえるよう、画策すべきと助言する。

 

もちろん、こちらのブログに頻出しているように

子宮体がんも初期のものは診断が難しい。

繰り返し検査をすることで

ようやく見つかるケースもあるので

こと、出血がある場合は

お手間でも検査に

トライしていていただきたいと思います。礼