婦人科便り211 男女の区別がつかない | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

ネタ提供ありがとうございます。

 

ネタが尽き気味なんで、みんな頼むよ―笑

どこまでも他力本願な私。

 

さて、こんなお尋ね来た。

面白いので即採用。

 

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Q.パッと見た感じ男女の区別がつかないのも困りませんか?

 

A.

そうだねえ・・・(振り返り)

 

婦人科に来るのは

「心は男性だけど、体の構造でうっかり女性に判別されてしまった」

という、いわゆるFTMの方々であるが

診察する方はあまり困らない・・・かな。

どうせパンツは脱いでもらうのだし(言い方)。

 

きっと困っているのは受診するFTMの方々のほうである。

 

だって外見を「ものすんごく男性」に整えてることが多いし

問診票でもちゃんと状況を書いてくださる人が多いし。

私たちが困惑しないようにという

スイートさがあるんですよ、彼らには。

ふつーのマダムの方がよっぽどビター。

問診票をお渡ししても

先生にぃ会ってからはなすー、

ここにはあたしの秘密、かーけーなーいー

みたいな態度太い人多いぜ!語尾伸ばすなホモサピエンス~

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生涯誰にも言わずに判別された性別を貫き通すことを

余儀なくされた時代から言えば、

限定的ではあるものの

実は私、男性です、と言える世の中になってきつつあり

環境は改善・・・してるのかなあ。どうですか。

まだまだ闘う余地はありそうですけど。戸籍とか。

世界に戸籍で民を縛っているのは日本と

日本に占領された悲しい歴史を持つ韓国のみで

あとの国は出生証明書なるものは発行するが

厳格な届け出は必要ないらしいっす。ほんとかなー自信なし。

情報ソースはアバウトなので、

詳しい方がいらっしゃったら情報提供求む。

いちお、イギリス人の知人には確認はしておいたが

その他の国のことは詳細不明。

 

ところでミスターがお困りになるのは

ずばり、待合室での待ち方、でしょうか。

産婦人科の待合室は、いわば女性下着売り場にほかならず

男性性を自認する方には居心地が悪きこと風林火山。

最近は病院の呼び出しも名前ではなく受付番号であるため

外見はすっかりガテン系ガチムチ男子であるにも関わらず

かわゆらしいキラキラネームで呼ばれる悲劇はなんとか回避できる。

・・・が、いかんせん、待合室での

なんとも言えない居心地悪さはいかんともしがたい、と推察されます。

 

その際のオススメとして

女性のパートナーが一緒にいてくれれば

付き添いのムッシュです風を気取れるので問題解決される。

マダムにべったりのムッシュですKA?という

あらぬ恥辱も受けるかもしれないが

ここは涙をのんでこらえるべし。

パートナーを募集中であっても

いとこ、姉妹、実母などを

応援に呼んでほしいところです。はとこでもいい。

 

さて最後に勝手な持論であるが

どうせ人間、この世での修行の期間が長くなれば

男性はより女性に近づき

女性はより男性に近づく。

つまり、誰しも

おばーちゃんっぽいおじーちゃんへ

おじーちゃんっぽいおばーちゃんへ

収束していく(と私は信じる)。

 

男女の別がとやかく言われるのは

生殖年齢のうちだけであると思うので

修行が極まり、突き抜けるまでの辛抱です。

時々繁華街のトイレで

「いまだけ男!」とか言いながら

推定女性が男子トイレに入っていくが

それくらいの周りの見えなさがあった方が

人生の荒波を楽々と超えてゆけるような気がしないでもない。

 

あと何年経ったらその境地に至れるのか

これからも修行を続けます。(今のところ未遂)